ロッキード事件を機に国会議員に疑惑をただす政治倫理審査会(政倫審)が国会に置かれたのは1985年。新聞の縮刷版を繰ると4月5日に設置決定の記事がある▼これと直接の因果はなかろうが、前日の紙面に自民党福田派に『同志の歌』ができた、とあった。福田赳夫元首相に頼まれた作家川内康範氏の作詞作曲▼詞に「明日の日本に想(おも)いを走(は)せて、援(たす)け合いつつ結ばれた」とある。安倍派に連なる後継派閥を近年取材した同僚らは「聞いたことがない」と言い、長く歌い継がれた形跡は確認できないが、85年の記事で中堅議員は「派の結束の固さを表す」と誇った▼自民党派閥の裏金問題を巡る昨日の政倫審に安倍派歴代幹部の4人が出た。派閥から議員に還流する金を収支報告書に記さず裏金にするしくみができた経緯など質問が核心に及ぶと知らぬ、存ぜぬ…▼知らぬなら、派に長く君臨した森喜朗元首相らに事前に聞けばいいのに「森元総理が関与したという話は聞いていない」(西村康稔氏)などとして、やっていないよう。裏金問題で解散を決めた派閥だが、歌詞のごとく助けあいつつ、嵐の通過を待っているようにも見える。明日の日本に思いはせ、悪習を詳(つまび)らかにする政治家はいないのか▼詞に「悪(あ)しきをいましめ、浄(きよ)らな花をすべての人にちりばめる」ともある。その志を思い、切なさ増す39年後の春である。