無実の殺人事件で、終身刑となった銀行員が20年がかりで刑務所からの脱獄を図る…。こう書き出せば何の話かもうお分かりか。米映画の『ショーシャンクの空に』である▼作品のテーマは希望の大切さなのだろう。主人公はどんなに過酷な状況にも決してあきらめない。「忘れないで。希望っていうのは良いものなんだ。たぶん一番」-。主人公のせりふを思い出す。ある女性がこの映画の大ファンだとおっしゃる。米大統領選挙の共和党候補選びでトランプ前大統領に挑む、ニッキー・ヘイリー元国連大使である▼ヘイリー氏にとっては映画の筋立てとはまるで異なり、希望の見えない火曜日の結末だろう。候補選びの最大のクライマックスで15州の投票が集中する「スーパーチューズデー」。ほとんどの州でヘイリー氏はトランプ氏に敗れた▼トランプ氏も民主党のバイデン大統領のいずれも大統領にふさわしくない-。その訴えもトランプ氏の大統領再選に燃える保守層の「岩盤」を突き崩すには至らなかった▼加えて連邦議会襲撃事件に関与したとしてトランプ氏の立候補資格を剝奪したコロラド州最高裁の判決を連邦最高裁が破棄。これもヘイリー陣営には逆風となる▼あの映画の主人公は小さなハンマーで刑務所の壁を崩していったが、へイリーさんのハンマーの方はもはや、折れたか。選挙戦からの撤退も伝えられる。