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今日の筆洗

2023年04月21日 | Weblog
アフリカを潤すナイル川が流れるスーダンはかつて、英国や隣国エジプトの支配を受けた。十九世紀後半、「救世主」を名乗る指導者が武装蜂起し国家を建設するが、やがて英国に武力で鎮圧される▼現在の首都ハルツーム近郊のナイル川沿いのまちの名から、オムドゥルマンの戦いと呼ばれる。後に首相となる若きチャーチルが新聞に寄稿するつもりで英軍に従軍した▼敵の死体が重なり異臭を放つ凄惨(せいさん)な現場。「神の思し召しにより創られた人間がこのような姿になるなど、想像するのは難しい」と活字に残した(『チャーチルは語る』浅岡政子訳)▼一九五六年の独立後も内戦が起き、軍事クーデターも繰り返されたスーダン。今は国の正規軍と準軍事組織が戦い、血が流れている。現地の約六十人の邦人退避のため、日本政府は自衛隊機派遣の準備を始めたが、本当に戦地に飛ばせるのか心配である▼戦闘で停電が頻発し、人々は食料確保に苦労しているようだ。飲み水さえ手に入らないと嘆く人の姿をテレビが伝えていた。まずは停戦実現に向け、各国が働きかけねばなるまい▼チャーチルは、オムドゥルマンの戦いで傷つき死に瀕(ひん)しながらナイルの水を求める敵兵の姿も描いた。「川までたどり着いて水際で死んでいた。死ぬ前にひと口でも水が飲めたと信じたい」。大河が潤す地に本来、渇きなど似つかわしくないのに。