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今日の筆洗

2023年04月07日 | Weblog
動物との交流に生きた「ムツゴロウ」こと作家の畑正憲さんは幼少時、満州の開拓団の村で暮らした▼医師の父が赴任したため。電気も水道もガスも店もなく、少年雑誌購読なども縁がなかったが、周囲の自然が友だった▼鳥や獣が多く、その雛(ひな)や子を捕まえては納屋で飼い、小川で魚を釣って餌にした。「私のまわりにはのべつ動物がいて、あの雄弁な愛くるしい瞳で見上げていた。(中略)私の中にある大切な部分は、この頃形造られたのではないかと思う」と著書『ムツゴロウの青春記』にある▼訃報に接した。ライオンに指をかまれようとくじけず、動物に愛情を注いだ人。動物たちが暮らす「動物王国」を北海道東部に開く前年の一九七一年、近くの無人島に妻や小学生の娘と移住。電気、ガス、水道のない島で一年暮らした。「生き死にに関わるような自然の変化に耐え、そこを突破することが、人間が生きる上で一番大切ということ。それを娘に教えたかった」と昨年の読売新聞で語っている。満州体験も影響したのだろうか▼父は満州に渡って医師免許を得た苦労人。無医村で開業し、頼りにされた。畑さんも誇りだったようで当時をこう振り返っている。「私たちは非常に幸福だった。家の中に笑い声が絶えなかったし、皆生き生きと生活していた」▼家族の情を知るゆえに、自然や動物への愛も育まれた気がする。