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今日の筆洗

2023年04月17日 | Weblog

山奥に住んでいたクマが園芸家と出会った。二人は一緒にくらすようになる。フランスの詩人ラ・フォンテーヌの寓話(ぐうわ)にある。この後、悲しい話となるのはよくご存じだろう▼ある日、園芸家が昼寝をしているとハエがその鼻の頭に止まった。クマは友人のためにハエを何度も追い払うが、すぐ舞い戻ってくる。クマはいら立った。クマは敷石をつかむとハエ目がけて力いっぱい投げつけた。ハエはつぶれた。が、園芸家も同時に死んだ▼この手の事件が起こるたびに愚かなクマを思い出してしまう。また、政治家を狙った事件である。和歌山市の雑賀崎漁港を訪れていた岸田首相の演説会に爆発物を投げ込んだ男が逮捕された▼映像のドーンという大きな爆発音に震える。安倍晋三元首相が撃たれて亡くなったのが、昨年の夏。政治家へのテロが日本ではもはや珍しくなくなってしまったのか。首相や聴衆にけががなかったことに胸をなで下ろす▼動機は分かっていないが、爆発物を投げるとは岸田首相やその政治に対し、よほどの不満や恨みがあったか。とすれば男はやはり寓話の愚かなクマだろう▼自分の意に沿わぬ政治に対し石を投げつけたつもりかもしれないが、その石はあの園芸家の命を奪ったように民主主義という制度そのものを傷つけている。不満があるのなら投げるべきは石ではなく選挙での「票」しかなかろうに。