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今日の筆洗

2023年02月09日 | Weblog
ワシが子ヒツジをさらって飛び去る場面をカラスの子どもが見ていたそうだ。あれぐらいのことは自分にだってできるだろう。そう考え、カラスは大きなヒツジに襲いかかった▼ヒツジの背中にしがみついたが、もじゃもじゃした毛が足に絡まって動けなくなる。あわれ、カラスはヒツジ飼いに捕まり、羽を切られる。ロシアの作家クルイロフの寓話(ぐうわ)集にこんな話があった。寓話が教えているのは十分な事前調査を怠った無謀な挑戦への戒めだろう▼飛べなくなったカラスに、国産初のジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)がどうしても重なる。三菱重工業は長年の念願だった同機の開発から正式に撤退すると発表した▼なかなか飛べぬ飛行機だった。二〇一三年納入の予定は検査態勢の不備などの問題が続出し、納期はたびたび延期に。小型機市場は今後伸びるとの見通しの中での開発だったが、これも怪しくなり、ついに断念とは、技術も見通しも甘い、あのカラスである▼商用運航に必要な「型式証明」取得の難しさや気候変動対策のための設計変更、コロナ禍などもヒツジの毛のように旅客機の足に絡みついた▼開発にあたった技術者もくやしかろうが、事業には一兆円近い開発費が投じられている。公的資金も含んでいる。<寒鴉(がらす)飛びあがりつゝ土を見る>渡辺白泉。用心深く足元を見なかった開発がくやしい。