東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2022年09月29日 | Weblog
電卓を使いたくなる野球選手がいつの時代もいる。今年でいえば本塁打を量産するスワローズの村上宗隆選手。このペースだと通算本塁打はどれほどになるのか予想したくなる▼この五年間の本塁打は百五十九本(二十七日現在)でシーズン平均三一・八本。問題はあと何年活躍できるか。現在二十二歳。選手寿命も延びているから、あと二十年と仮定する。三一・八掛ける二十で出た数字は六百三十六本。これに百五十九本を加えて、七百九十五本。王貞治さんの八百六十八本に迫る▼愚かな計算だと電卓を置く。もし今のペースなら。もし現役を長く続けられたら。そのもしを守るのが難しい。西鉄ライオンズで活躍した池永正明さんが亡くなった。七十六歳。もしを失った名投手である。八百長の「黒い霧事件」に巻き込まれ、一九七〇年、永久追放処分となった。当時二十三歳。村上と変わらぬ▼「(ボールで)つむじ風を起こしているように少年の目には映りました」。作家の伊集院静さんが書いていた。入団五年余で百三勝。もし投げ続けたら三百勝に届いたか▼八百長を否定するも先輩から大金を押しつけられ、預かったことが処分の理由になった。二〇〇五年に処分解除となってももしを思わなかった日はなかっただろう▼今の時代も妙な誘いがないとも限らない。もしを手放してはなるまい。野球だけの話ではない。