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今日の筆洗

2022年09月01日 | Weblog

ロシア人は見知らぬ人の前ではあまり笑わないそうだ。こんなことわざまである。「意味のない笑いはバカの笑い」。歯を見せて笑うことは「馬の笑い」と呼ばれ、軽蔑されると聞く▼旧ソ連時代の指導者たちの写真や肖像画を思い浮かべてみる。なるほど爆笑はおろかほほ笑みも想像できぬ。フルシチョフはどうか。ブレジネフは。みな険しく深刻な顔をしている▼「馬の笑い」はともかくこの人には笑顔があった。少なくとも、笑おうとしていた印象はある。ゴルバチョフ元ソ連大統領が亡くなった。九十一歳▼ペレストロイカ(改革)、グラスノスチ(情報公開)−。訃報に当時、日本でもおなじみになったロシア語が浮かぶ。その人が断行した政治と経済の改革はやがて東西冷戦の終結へとつながる。旧ソ連を解体した人物としてロシアでの評判は芳しくないが、冷戦・核戦争という当時人類が直面した危機に際し、解決の糸口を探り当てた政治家といえる▼一九八七年の訪米時の歓迎会。レーガン米大統領とともに歌ったゴルバチョフさんを思う。歌は「モスクワ郊外のゆうべ」。<ざわめきも今はなく ものみなまどろむ>。ともに歌い、笑う。核軍縮、冷戦終結に向かう時代の象徴的な場面である▼母親がウクライナ人だった。ウクライナの現状と、やはり笑顔のない今のロシアの大統領に胸を痛めていたはずである。