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今日の筆洗

2021年01月31日 | Weblog
 かつての武士はツバキの花をきらったそうだが、理由はその散り方にあるらしい▼ツバキが花を散らす季節である。路上に落ちた花を見れば、ツバキは花弁をハラハラとは散らさない。花ごとぽとりと落ちる。その様が首が落ちるのに似ているところから縁起が悪い花とされたようだ▼縁起を気にすればきりがない。不吉なものを避ける「忌」の漢字は「己」の「心」。縁起にさわろうとも己の心次第であり、気にしすぎるな。いにしえにそんな教えもあるが、これはツバキ以上に気になるだろう。大阪市が新型コロナウイルスの感染者に送付する封筒に、葬儀社の広告が印刷されていたそうだ▼ただでさえ気持ちの落ち着かない感染者に、いやでも死を想像させる広告はやはり無神経である。市はこの封筒の使用をやめたそうだが、当然で、広告主の葬儀社の方にしたって、人の不幸を当て込んでいるような印象を持たれては広告として逆効果だろう▼不思議なのはこの封筒を使えば「縁起でもない」と市民から苦情を頂戴することになるという想像を誰もできなかったことである。行政側もコロナ対応に追われ、気働きに欠けるほど疲れているのかもしれない▼封筒を受け取った人はショックだっただろう。その広告は葬儀社だけに「治療がはか(墓)どる」という縁起のよいシャレと受け取りましょうよとお慰めするしかない。