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今日の筆洗

2021年01月24日 | Weblog

 大空に飛行機を見つけた少年は父親にこう言った。「大人になったらパイロットになる」。父親は答えた。「黒人はパイロットになれない」▼「じゃあ野球選手になる」「黒人は野球選手になれない」。父親の言葉にも少年は野球選手を目指し、やがて野球の神様ベーブ・ルースを超える選手となった。通算本塁打七百五十五本。ブレーブスの強打者ハンク・アーロンさんが亡くなった。八十六歳▼黒人リーグ時代はバットを逆に握っていたそうだ。右打者の握りは右手が上にくるが、この人は左が上。それでも打てるほど手首が強かった▼「ルースの本塁打記録を追いかけることは最高の喜びとなるはずだったが、最悪だった」と書いていた。白人のルースの記録を黒人が塗り替えるのは許せない。そう考える人々がいた。「引退しろ」「キング牧師は早死にした」。届いた九十万通の手紙。大半が脅迫や嫌がらせだった▼その手紙を捨てなかった。それを見て記録更新の励みとした。自身の苦い経験からだろう。王貞治選手がアーロンさんの通算本塁打記録を抜いた時、一切、ケチをつけず、称賛した。アーロンが認めた。当時の日本の少年にはそれがどれほどうれしかったことか▼練習の人だった。差別や憎悪にも心を乱さず、努力する。なるほど偉大な野球選手であると同時に人々の水先案内人(パイロット)になっていた

Vin Scully calls Hank Aaron's historic 715th home run