<世の中は澄むと濁るのちがいにて、福に得あり、河豚(ふぐ)に毒あり>。これも一種のシャレ、地口の類いか▼濁点の有無で意味が変わる単語を利用した言葉遊び。なるほど福と河豚、得と毒では大違いである。<世の中は澄むと濁るのちがいにて、人は茶をのみ、蛇は人をのむ>。茶と蛇。音が濁っただけで言葉の顔をがらりと変えるのが、なんともおもしろい▼擬態語、擬音語にもある。「しとしと」と「じとじと」、「しっとり」と「じっとり」はどうだろう。「日本語オノマトペ辞典」によれば「しとしと」「しっとり」は「適度な水分で全体がまとまって落ち着いている感じを示している」。一方「じとじと」「じっとり」は「しっとりよりも湿気の多い感じを示し、不快感が伴う」と、評判が悪い▼「じとじと」「じっとり」の梅雨が関東ではまだ明けない。昨年の梅雨明けは十日、平年は二十一日ごろなので遅い。過ごしやすい日もあったが、土用の丑(うし)の日も近いのに、まだ梅雨の最中なのかと考えるだけで気分が晴れぬ▼そのくせ、雨量はさほどでもない。利根川水系上流にあるダムの貯水率はあまり回復していない。水不足も心配である▼気分の悪い事件もあった。そう八つ当たりしたくなるほど、今年の梅雨は底意地が悪い。からっと明け、人の心を澄ませてくれまいか。八月の濁った「罰月」などごめんである。