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今日の筆洗

2016年02月19日 | Weblog

人間というのは、見えないものを見たがる動物なのだろう。今から百二十年前の冬、世紀の大発見が欧米を騒然とさせた。ドイツのレントゲン博士が、骨をも透かし見ることができるエックス線を発見したというニュースが駆け巡ったのだ▼その驚異の透視力はあらぬ誤解も生んだ。エックス線は「服をも透かし見る、いやらしい光線」と風刺され、米国ではこの発見を悪用した双眼鏡が作られぬようにしようと法規制まで論議された▼そんな滑稽な騒ぎをよそに、エックス線はすぐに医学などで威力を発揮し始めた。一九六〇年代になって、この「新たな目」が星に向けられると、それまで決して見ることのできなかった宇宙の姿を見せてくれるようにもなった▼冷たく、静かな宇宙ではなく、熱く、荒々しく、渦巻く宇宙。エックス線による観測は、そういう姿の一端を明らかにしてきたが、おととい打ち上げられ、「ひとみ」と命名されたエックス線天文衛星は、八十億光年先までも見通し、光すらのみ込むブラックホールなどに目をこらすという▼一九九三年に八十八歳で没した物理学者ブルーノ・ロッシ博士は、「ある実験が予想とまったく違う結果を生んで、自然が人間の想像を絶する姿を見せる」のを見たいがため、エックス線天文学を創始したそうだ▼新たな人類の「ひとみ」は、どんな姿を見せてくれるだろうか。