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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「海一族と山一族」27

2017年10月03日 | T.B.1998年

「お前らの目的は何だ!?」

アキラは裏一族を問い詰める。

「さぁ。
 それは、上の者しか知らん」
「ふざけるな!!」
「信じる信じないはお前の勝手だが、
 いいのか?
 時間はどんどん過ぎていくぞ」

捕まっているにも関わらず
裏一族は余裕の態度を見せる。

それほど、生け贄を手に入れる事が
大事だったと言う事。

トーマとアキラは顔を見合わせる。
今は、カオリの身が危ない。

アキラは自身の鳥を呼び寄せる。

「山に情報を」

その言葉を理解したように
鳥は高く旋回して、
山へと飛び立っていく。

「行こう!!」

トーマとアキラは走り出す。
先に後を追っていたミナトの合図を頼りに進む。

進んでいるのは山の方角。


生け贄。


裏一族は確かにそう言っていた。

トーマは混乱する。

土地が、水が穢れるそれを
癒すために、と
差し出される生け贄。

それは、
海と山の2つの一族間で伝わる、
ある意味伝統のような物では無かったのか。

「トーマ」

ふと、アキラが声をかける。

「裏一族が集める生け贄の話
 知っているか?」
「……いや」

トーマは首を振る。

「裏一族の事は
 情報が少ないからな」

便宜上、一族、と呼んでいるが
彼らの血のつながりは薄い。
元々の一族を追われた者、璃族した者。
そういった者達の集団が【裏一族】。

当然、まっとうな生き方をしている者は少ない。
関わらないのが一番だと言われている。

「昨年の話しなんだが」

アキラは言う。

「山一族から姿を消した者が居た」
「姿を?」
「今も行方が知れない」
「………」

どこかで聴いたような話だ、と
トーマは何かが引っかかる。
失踪ではないが、
一族から姿を消した者が居なかっただろうか。

「真相は判らないが、
 裏一族に連れ去られたのでは、という噂もある」
「生け贄に?」
「それは、何とも言えない」
「そうか」

「………その者は、純粋な山一族ではなく」

「何?」
「西との混血だった」

海一族であるトーマには
聞きかじった話しだが、
山一族と西一族は同じ狩りの一族。
狩り場を巡って対立している。

「裏は何を考えているんだ」

嫌な予感しかしない。

対立している所には
なぜか裏の影が見え隠れする。

カオリの事もそう。
準備されていた生け贄を横から奪っていったのか、

それとも

すべて裏の仕組んだ事だったのか。

「早く、カオリを取り戻さないと」


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