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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「山一族と海一族」31

2017年10月06日 | T.B.1998年

 ふたりがたどり着いた先

 そこは

 山一族と海一族の中間地点。

 お互いが不可侵とする場所。

「おい! ここだ!」

 そこで、誰かが手を振っている。
 先ほど裏一族を追いかけて行った者。

「あの裏一族、この奥に入っていったぞ」
「判った」

 トーマがその者に礼を云う。

 アキラはあたりを見る。

 うっそうと樹々が生い茂り、光を遮っている。
 薄暗い。
 降り続いた雨で足元はぬかるんでいる。
 そこに、道はない。

「気を付けろよ」

 海一族の言葉にトーマが頷く。

「山一族」

 アキラは、海一族を見る。

「何だ」
「ここから先、俺は行けない。トーマを頼む」

「……行けない?」

「そう云う決まりなんだ。さあ、行け!」

 ふたりは走り出す。

 走りながらアキラはトーマを見る。
 訊く。

「決まりとは何だ?」
「普通の海一族は、神聖な場所には立ち入れない」
「神聖な場所? ここが?」
「そうだ。知らないのか」

 アキラは首を傾げる。

 ここは、そもそもの中間地点。
 自身は普段、近寄ることはない。

「海一族は信仰心が強いからな」
 トーマが云う。
「決まりを破ると、海が荒れると云われている」

 つまり、海一族の要である漁が出来なくなる、と。

「山一族には、そう云うのはないのか?」
「うちの一族は……」

 海一族と、まったく同じだ。

 山の神「フタミ」の教えがある。
 決まりを破れば、同じようにフタミの逆鱗に触れる。
 天や山が荒れ、猟が行えなくなる。

 アキラは訊く。

「ここでは、海一族の神を祀っているのか」
「いや」

 トーマは立ち止まる。

 アキラも立ち止まる。
 足元を見る。

 突然、現れた道。

「ここは、」
「ここは?」

「生け贄が最期を迎える場所だ」

「……何?」

 アキラは息をのむ。

「お前、なぜそれを、」

「俺は、長候補だからな」

 ふたりの足元から延びる道。
 ここを通って、過去の生け贄たちは死へと向かったのか。

「この先に」
「カオリと裏一族が」

「アキラ」

 トーマが云う。

「お前、魔法は詳しいか?」
「いや。俺は専門ではない」
「俺もだ。多少使える者はいるんだが、専門の北一族には及ばない」
「魔法がどうかしたのか」

「どの一族にも禁じられている魔法があるらしい」

「禁じられている?」

「旧い時代に出来た魔法だが、倫理に反するという理由で」

 それでも、今もなお

 それは受け継がれている。

「人の命を犠牲にして使う魔法だ」



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