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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「成院と戒院と」1

2017年10月24日 | T.B.1997年

「なんで、
 今日はお前と当番なんだろう」

ほわっと呟いた戒院(かいいん)の言葉に
成院(せいいん)は、ふむ、と考える。

東一族の村の入り口。
門番のように
左右に並び立つ2人の顔は同じ。

正面を向いたまま
視線を向けることなく成院は答える。

「……双子だから、じゃないか?」
「安易過ぎるだろ、それ!!」

八つ当たり気味に
戒院は持っていた棒を
地面に投げつける。

「どうせなら、
 女の子と組みたいっ」

東一族では村の警備や
戦うのは男の仕事。
無理な話である

「組んでどうする。
 女性を警備に付かせるつもりか」

何を言っているんだ、という
成院の言葉に
出ました、あぁ、出ましたよ、と
悪態をつく。

「そういう所!!
 成院のそう言う所!!
 女性って紳士かよお前!!」

別に、女の子を戦わせたい訳じゃない。
あえて言うならば
つまらない任務における潤い成分。

知っているか、と
戒院は言う。

「西一族は女の子も戦うらしい。
 でも、一緒に戦いながらも
 いざという時は守って格好いいって言われたい。
 西一族羨ましい」

そろそろ本気泣きしそうな戒院に
成院はどん引きする。

「そんな理由で羨ましがられるなんて
 長年敵対している
 西一族もびっくりだろうよ」

成院と戒院。
東一族の双子。

同じ顔立ち、同じ身長。
声も全く同じ。
でも、性格は同じにならなかったようだ。

「あ、ほら誰か来たぞ
 しっかりしろ!!」

その言葉に
へいへい、と
戒院は立ち上がる。

「うーん、あれは南一族かな」
「そのようだな。
 親子連れ、か」

任務はその時で色々と違うが
今日は比較的手軽な任務。

他の村から来る旅人を
誘導する係。

「こんにちは、
 東一族の村へようこそ」
「今日は観光でお越しですか?」
「俺達、村の案内をしています。
 成院です」
「戒院です」

「お困りのことがありましたら
 どうぞお声かけ下さいね」


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