「耀、見つからなかったって?」
「そうなのよ」
狩りが終わり、西一族の村での作業中。
「もう1年近いんだっけ? いなくなってから」
その言葉に、京子は頷く。
「どこに行っちゃったのかなぁ」
いつからか、耀の姿は西一族から消えた。
もともと、村の外に出ることが多い耀だったが。
妹である京子は、暇さえあれば耀を探していると云う。
つい先日も、北一族の村まで出向いていた、と。
「でも、まあ。思ったよりは落ち込んでないわよ」
「無理はしないで」
華が云う。
「京子まで倒れたら、大変」
「気を付けるわ」
はい、と、研ぎ終えた小刀を、華は受け取る。
華はそれを拭き上げる。
京子は、次の道具に取りかかる。
「それ重いだろ。代わるよ」
「ありがと、巧。じゃあお言葉に甘えて」
巧は、受け取った道具の整備をする。
華と京子は獲物を捌くのを手伝う。
「今日は獲物が多かったから急げよ!」
向が云う。
「ほら、巧も」
「手分けして」
「広司は捌き終わったみたい」
「もう終わったの!? 早いわね、どれどれ」
まだ、狩りの班では年下である広司の動きに、皆驚く。
「広司は、狩りの感覚も、捌くのも上手いんだな」
うんうん、と、向が頷く。
「上手に出来てるわ。手際がいいのよ」
京子は、嫌がる広司の頭をなで回す。
「京子、あまり広司をからかうな」
「からかってません! これはそう、先輩からの助言よ」
巧は息を吐く。
あきれる。
「それがからかっていると云うんだ」
その後も、わいわいと作業を続け、
日が暮れるころ、やっと終わりとなる。
「お疲れー」
「巧、このあと飲むか?」
「そうだな」
「あれ? 京子と広司は?」
「とっくに帰ったぞ。気付かなかったのか、華」
「えぇえ? いつの間に?」
華は首を傾げる。
「まあ、いいじゃないか」
向は頷く。
「いるやつだけで、飲みに行こう」
向の手には、今日捌いたばかりの肉が握られている。
これを屋台で焼いてもらうのだ。
向は、広場に残っている者に声を掛ける。
「ねえ?」
華が云う。
「どうかした? 巧」
「え?」
「何か考えごとかと?」
「いや、別に……、何でも」
「ふーん?」
向が屋台の方へ行こうと、手を振っている。
華が走り出す。
巧はその様子を見る。
これまで通り
きっと
……たぶん。
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