「向!」
「はいよ!」
巧は走る。
足下は悪い。
回り込むように、向が走る。
ふたりの間には、獲物。
道はない。
草をかき分ける音。
獲物は必死で逃げる。
巧と向は、武器を握りしめる。
獲物は早い。
が、
追い詰めている。
「行け、巧!」
向が叫ぶ。
その言葉と同時に、巧は、獲物に飛びかかる。
獲物は鳴き声を上げる。
「早くとどめを!」
獲物は巧を振り払う。
「待ってました!」
華が現れる。
突然のことに、獲物は、たじろぐ。
「油断するな!」
「判ってる!」
獲物は弱っている。
華はひるまない。
巧と向も追いつく。
華も武器を振り下ろす。
「どうだ!」
「やったか?」
獲物は、
倒れる。
3人は、その様子を見る。
動きが止まるのを、待つ。
「いけるか?」
「大丈夫そうだな」
「今日の獲物ぉ!」
3人は、手を叩く。
「お疲れぃ!」
「よかった」
「いい獲物ね!」
巧は、獲物を持ち帰る準備をする。
「いや~。俺たちの連携最高」
そんな向に、華が首を傾げる。
「向は、何したの?」
「俺か?」
「何か、走っていただけだったっぽいですけど」
「俺は、獲物を追い詰めた」
「あ~、うーん」
「そして指示を出した!」
向は胸を張る。
「俺は、班長だからな!」
「はいは~い」
「何だ、華! その適当な返しは!」
「妥当なる適当です」
「妥当なる!?」
ふたりのやりとりに、巧は笑う。
そして
そろそろ行くか、と云うころ。
華が云う。
「ほら、新月のときに出る、獲物の話」
「新月?」
「満月じゃなかったか?」
「白い熊の話よ」
「今日は何だ?」
「新月だ」
「ちょっと待ってみようよ」
もうすぐ、日が暮れる。
「待つのか?」
「本当に?
「そう」
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