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「ヨツバとカイ」6

2014年09月02日 | T.B.2000年

二人は昼食がてら、露店の軽食を食べる。
ふと、カイは立ち上がる。

「飲み物、おかわりいる?」

ヨツバは首を横に振る。
そう、と頷き、カイは自分の飲み物を買いに行く。
帰って来たときには、いらないと言ったヨツバの分も手に持っている。

女性が好む様な
甘くて量の少ない飲み物。

気が利いているのだろうけれど
誰からも勘違いされそうな態度を取る人だな、と
ヨツバは笑う。

「……なに?」

ヨツバの視線に気付いたカイが
うん?と首をひねる。

「いいえ。あなたお茶を飲んでばっかりなのね」

昼食の味が濃かったのか、西一族と東一族の味覚の違いだろうか。
緊張するような性格にも見えないし。
そう言うヨツバに、あぁ、とカイは答える。

「これは、そうだな。後遺症というか。
まぁ、そんな感じ」
「なにそれ」

うーん、と言って
カイはカップを手元に置く。

「ヨツバ」
カイは言う。
「以前、俺を見かけた、と言っただろう」
「えぇ」

そう。ヨツバとカイが最初に交わした会話だ。

「それ、俺の兄弟だ」
「……あなただったと思うけれど」

「そう思うだろうね」

カイは言う。

「俺達は双子なんだ」

ヨツバはその言葉を本当だとも嘘だとも思わなかった。
本当に双子なのかも知れないし、
何かをはぐらかすために言った言葉かも知れない。
ヨツバにとってはどちらでもいい事。

「……じゃあ、別に兄弟がいるのね」

ヨツバには兄弟も姉妹も居ない。
サトルには妹がいて、双子ではないけれど
やはりどこか似ている所がある。

双子ならば、さぞ似ているのだろう。

「うん、いた」
「……いた?」

カイは笑う。

「死んだよ。病だったんだ」

カイは調子を変えず、
ヨツバに冗談を言ったときの様に話す。

「病が2人。薬は1つ。
―――選ばなきゃいけなかった」

だからそれは作り話の様に聞こえた。

「俺は選ばれた。だから」

それでも、そうやって話すカイの声は
少しだけ掠れていた。

「俺はこれからずっと
 あいつの代わりに生きていくんだろうな」


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