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「燕と規子」10

2016年04月05日 | T.B.1962年

招集命令が出た次の日には
燕達は戦場に足を踏み入れる。

以前居た砦は
東一族に落とされたので
その手前に設けられた仮設の砦。

「元々は俺達が押していたんだ。
 状況が戻っただけだ」

誰かがそう言う。

襲撃から生き残った物達と合流し
再び攻めに転じる。
そういう戦いになるはずだ。

「奇襲というよりは
 とりわけ腕の立つ者が揃って来た
 そんな感じだったな」

あちらもいよいよ
たたみ掛ける事に本気なのだろう。

今までは
東一族に出会っても
可能な限りは捕獲する、だったが
今度はそうではない。

倒すように、と
そう言われている。

土地でもなく、
物でもなく、
何を奪い合うわけでもない。

意地で続いているこの戦いも
どこかで線引きする時が来るのだろう。

「確かに、
 今度の戦いが
 一番の山場、だろうな」

全体は大きく
襲撃班と
砦の守備に分けられる。

燕は襲撃の班に割り当てられる。

日が暮れて、
辺りが暗くなり始めてから
燕達は動き始める。

夜襲を狙う。

「燕」

共に行動している仲間の一人が
燕に話しかける。

「こんな時ばかり
 都合が良いやつだと思われるかもしれないが」

躊躇いながら言う彼は
普段は
燕の眼の事でよく突っかかって来る。

「お前のことは気にくわないが
 お前の腕は疑ったことが無い。
 ……信じてる」

あぁ、と燕も応える。

「そんな風に思っていたとは
 初めて聞いたな」
「初めて言うからな」

お互いに、この班では
まだ若い。
彼の表情がこわばっているのは
暗闇でも分かった。

「村に帰っても
 同じ言葉を聞かせてくれよ」

先頭のメンバーから距離が離れる。
遅れずに行こう、と
彼らは進む。

「ここから更に班を分ける。
 襲撃が始まれば混戦が予想される。
 各々で判断するように」

班長が言う。

先程話した彼とも
そこで分かれる。
それじゃあ、と
手を上げた燕に彼は応える。

皮肉なことだ、と
燕は思う。

「争いが無かったら
 こんな事も無かっただろうな」

少人数になった班は
更に決められた地点へ向かう。

「元々、西一族の砦だ。
 内部が分かる分
 少しは動きやすい」
「あとはここで時間を待つぞ」

砦から少し離れた草むらに
燕達は待機する。

「……燕?」

どうした、と
仲間に話しかけられ
いや、と燕は首をひねる。

「東一族も、
 夜襲はきっと想定しているだろう」
「だろうな。
 きっと簡単にはいかない」
「東一族が襲ってくるのを
 待つだけで居るだろうか?」

場所を変えよう。

そう言おうとした瞬間。

ぐん、と
足下が歪む。
見下ろすと、魔方陣が浮かび上がる。

しまった、と
思わず舌打ちが漏れる。

「……魔法っ!!」


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