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「涼と誠治」30

2019年02月01日 | T.B.2019年


 雨が降っている。

「誠治!」

 涼は声を出す。

「止まれ!」
「駄目だ」
「誠治!」

 涼は、誠治の手を振りほどこうとする。

 けれども、出来ない。

 誠治は走り続ける。

「誠治っ」

 まずい。

 裏一族が魔法を使おうとしている。

 魔法に精通した裏一族なら、あたり構わず、使ってくるだろう。
 自分たちを殺すために。

 どこの魔法だ。

 裏一族との距離はまだある、が
 雨でぬかるむ道に足を取られ、走る速度も落ちてくる。

「誠治、魔法だ!」
「何、」
「止まれ!」
「このまま、逃げ切る!」

 涼ははっとする。

 強い光。

「へ、びっ!」

「あっ!」

 蛇のように伸びる光が、誠治の足にまとわりつく。

「何だこれは!」

 それでも、誠治は走る。

「誠治! こちらの居場所を感知している!」

「!?」

「止まるんだ!」

「っ、身体の力が!?」

 涼は足を踏み張る。
 誠治の動きを止めようとする。

「これは、体力や魔力を吸い取る魔法だ!」
「何?」

 このままでは

「死ぬぞ!」

 それでもなお、誠治は進もうとする。

「村にさえたどり着けば、」
「誠治!」

 誠治の力は強い。

 足に絡む光が強くなる。

 涼は目をこらす。
 その光を見る。

「北一族式……」

「涼、走れ……!」

 涼は誠治を見る。
 追いつかれるのも、時間の問題。

 雨が降り付ける。

「いた!」

「何っ!?」

 突然、目の前に裏一族が現れる。

 誠治は驚き、立ち止まる。

「おーい! ここに西がいるぞ!!」

 大声を出し、裏一族が笑う。

「さあ、殺してもいいと云われているし」

 涼は裏一族を見る。

 追いついてきたのは、ひとり。
 動きが速い、のか。

「ほかのやつらが来るまで、何をするかな」

「く……」
 誠治は肩で息をする。
「こんなところで……」

 涼は誠治の前に出る。

 誠治は明らかに疲弊している。
 体力が、奪われている。

 時間がない。

 涼は誠治を見る。

 そして、裏一族に向く。

「何一族だ」
「裏だよ」
「元は、砂一族だな?」
「ははっ」

 突然の吹き矢。

 涼の顔をかすめる。



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