木の葉が散る時期。
この時期が過ぎると、ほんの少し、厳しい時期がやって来る。
「兄様、今日は何をするの?」
「今日は、だな」
「南に行く?」
「いや、いったん芋焼くか!」
「いったん!!」
彼は手に持つものを見せる。
「おお!」
まごうとなき、芋。
「すごい! すごいわ!」
「すごかろぅ!」
「初回から、いろいろ食べ過ぎている気がするけど!」
「この時期を満喫せねばなるまい!」
彼はこっち、と、手を招く。
彼女は彼に続く。
田畑の道。
彼女はあたりを見る。
木の葉が舞う。
彼が立ち止まり、声を出す。
「おーい!」
「?」
彼女は彼が見る方向を見る。
「ここ場所借りてもいい!?」
畑で作業をする東一族が顔を上げる。
ふたりに気付く。
「何だ。毎年のあれか!」
「そう、あれ!」
「もちろん合点! 楽しみにしているよ!」
収穫の終わった畑の隅に、彼は、枯れ葉を集めはじめる。
彼女も真似をする。
「火を起こすのね」
「そう。落ち葉はたくさん集めるんだ」
ふたりは、せっせと落ち葉を集める。
「兄様、こんな感じ?」
「いやいや、もっとだ」
「もっと? これじゃ足りないの?」
「当たり前だ!」
彼はなぜだか、胸を張る。
「みんなの分を焼くからな!」
「みんなって?」
「家族と友だちと、……媛さんの家族も食べるだろう?」
知り合いが多いと、大変なのである。
彼女と彼は、落ち葉を集める。
「兄様、芋好きなの?」
「そうなんだよー、芋好きなんだよなー」
彼は笑う。
芋を水で濡らし、くるむ。
落ち葉に火を付ける。
(よい子は大人の人とやろうね!)
「はあ、楽しみだなぁ」
「うんうん」
彼はさらに落ち葉を集める。
彼女は火を見守る。
「ねえ! もういいかな?」
「まだ!」
「兄様ー!!」
「まだだって!」
「これいつ出来るの!?」
「俺に任せろ!」
鍋奉行ならぬ、焼き芋奉行。
彼は集めた落ち葉を、横に置く。
火加減を見る。
「よしよし」
「もう食べられる?」
「これは焼けてる」
彼は、焼き芋を彼女に渡す。
「あっつ!!」
「熱いから気を付けろよ~」
「遅っ!!!」
「焼き立てなんだから、当たり前だろう」
彼女は手のひらを、ふうふうする。
「おっ、うまそう」
彼は焼き芋を半分に割る。
ほくほくの中身が現れる。
「おいしそう!」
「うまいぞ!!」
「おいしい!」
「うまい!!」
彼女と彼は、芋をほおばる。
「懐かしい味ー」
「なふふぁひい??」
もぐもぐしながら、彼が訊く。
「何、懐かしいって?」
「判らないけど、懐かしい味」
「焼き芋が?」
「誰かにもらったのかなぁ」
「ふーん?」
彼女は空を見る。
「空が、高い」
「だな!」
「兄様」
「何?」
「またやろうね!」
「もちろん!」
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