TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「律葉と秋葉と潤と響」21

2019年02月05日 | T.B.2024年

ふと、人が現れる。

律葉とその化け物の間に
それこそ、音もなく。

「だれ?」

思わず、律葉は呟く。

フード付きのマントを被っており
顔がよく見えない。

見えるのは口元だけ。

なんとなく、男のひとだろうか、と
それぐらい。

この状況を見ても、
何一つ驚いた様子が無い。

す、と彼は化け物の方に歩んでいく。
彼が手を伸ばすと、
まるで飼い犬のように化け物が頭を垂れる。

声は聞こえない。
彼がなにかを化け物に呟く。

瞬間。

「きゃっつ」

化け物の尾だろうか、腕だろうか
それが一瞬で律葉をはね飛ばす。

「……痛っ」

数メートル転がり、
律葉は脇腹を抱えながら起き上がる。

「あなた」

律葉は彼の方を見る。

音もなく現れた。
その時点で気付くべきだった。

魔術。

そして、人が使う化け物、
話だけなら聞いたことがある。

「それ、あなたの使い魔、ね、」

東一族が従える獣と
北一族が魔法で作り出すという獣。

おそらく、これは後者。

「ここは西一族の狩り場よ。
 それは分かっているのかしら」

もちろん、と
いわんばかりに彼の口元が歪む。

「…………」

最初、彼はこの獣を止めに来たのかと思った。
だけど、違う。
あえて、律葉を攻撃しろ、と命令を下した。

きっと、響にもそう。

「どうして、こんな事を」

律葉が問いかけるが
彼は口元に笑みをたたえているばかり。

ふと、なにかまた呟く。
また化け物に命令をしたのだろう。

思わず律葉は目を瞑る。

「律葉!!どこ!?」

たたたた、と
駆ける足音が近寄ってくる。

小さな、足音、これは。

「秋葉!?」

お、と彼もそちらを向く。

「駄目!!こっちは駄目よ、秋葉!!
 逃げて!?」

律葉が叫ぶほど、
どうしたの、と秋葉は駆け寄ってくる。

「律葉、どうしたの??
 りつ、……は!!?」

え?と化け物を見て
秋葉が動きを止める。

律葉は秋葉に駆け寄る。
駄目。
秋葉だけでも。

彼が腕を振るのが見える。

化け物が秋葉を向く。

駆け寄る。

「秋葉!!」

律葉は腕を伸ばす。


NEXT

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。