TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「規子と希と燕」4

2014年10月21日 | T.B.1961年

規子は少し離れた所から希と燕を見ていた。
あと少しで、二人が獲物の射程距離に入る。

が、

そんな所で急に獲物の牝鹿が動き出す。

「めずらしい」

あの二人が
獲物に気配を気付かれるとは。

規子はボウガンを放つ。
その矢が獲物の背中に刺さる。
だが当たりが浅く、一瞬ひるんだ後に獲物は素早く駆け出す。

「やっぱり、ここからじゃ距離が」

急いで二発目を構えた規子に
燕の声が飛ぶ。

「規子!!撃つな!!」

何を、と言いかけた規子の言葉を遮る様に
どっと、辺りが騒がしくなる。

突然現れた馬が規子達の獲物を追って駆けていく。
獲物は先を行く二人に気付いたのではなく、
この現れた馬の気配を察したのだ。

「待て!!」
ちっと舌打ちをして、その後を希と燕が追いかけていく。

「なんなのよ」

状況が分からない規子は二人を追って走り出す。

「……馬に誰か乗っていた?」

馬に乗って狩りをするのは、
西一族の中でも狩りのベテランだ。
集団で狩りをする規子達と違って、単独で狩りを行う。

「でも、それなら、おかしい」

狩りをするときはおおよその場所を決め、その狩り場に印を付ける。
狩りの最中に誤って、お互いを獲物だと間違わない様に。

それが西一族の狩りのルールだ。

「違うの、なら」

それが違うというのなら、
西一族でないのなら。

規子がそこに辿り着いた時には
牝鹿はすでに仕留められ横たわっている。
そこに希と燕と

獲物を挟んで
馬の上から二人を見下ろす様にもう一人。

「……っ!!」

彼が西一族でないというのなら、他には一つしか選択肢がない。

西一族と同じ白色系の髪。
そして、西一族には存在しない、金の瞳。
同じ狩り場を巡って、西一族と対立しているもう一つの一族。

「山……一族」

その言葉に、山一族はちらりと規子の方を見る。



NEXT

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。