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「律葉と秋葉と潤と響」3

2018年09月25日 | T.B.2024年

「行ったよ!!」
「了解!!」

秋葉の声に応えて
響が駆ける。

「はい、ごめんね」

とす、と
その一撃で獲物が倒れる。

まだ暴れる獲物を
駆け寄った律葉と取り押さえ、
潤がとどめを刺す。

食料を得るための狩り。
無駄に苦しませることはしない。

「………これで、2匹目」

初日の成果としては
まずまずでは無いだろうか。

「もうちょっと奥に行ってみる?」
「いや今日はあくまで
 このメンバーでの狩りに慣れるのが目的だ」

無理はしない、と
潤が言う。

「潤、班長みたいだな」
「班長だよ」

秋葉も追いついてきて
やったね、という。

「今日はなんだか
 とっても調子が良い感じ」
「今日は、って
 このメンバーでの狩りは初めてだろ」
「うーん。そうだけど。
 前から班を組んでいたみたいな」

確かに、と律葉は思う。
半日狩りを行ったが、
とても動きやすかった。

飛び抜けて腕前がある者も居ないが
下手な者も居ない。
なにより、皆、とっさの判断が上手い。

動くべき所をそれぞれが分かっている。

この班、当たりだったかも、と
律葉は思う。

「少し早いが切り上げるぞ。
 獲物を運ぼう」
「はーーい。
 待って、縄を準備するから」

私も、と律葉も荷を整える。

「命に感謝します」

そう、小さく声が聞こえて振り返る。

「………?」

帰りの道、
潤、秋葉、律葉、響と
並んで山を下っていく。

「ねぇ、響」
「ん?」

なになに?と
響が顔を寄せてくる。

なんというか、
彼は人との距離感が近い。

「もしかして、
 狩りは苦手だったりする?」
「えぇ?
 俺の弓矢、もしかしてイマイチだった?」
「違うよ。
 その、腕前がとかじゃなくて」
「なくて?」
「………生き物、殺すのが嫌、とか」
「あ!!
 もしかして、さっき聞こえてた!?」

先程、響は
狩ったばかりの獲物に祈っていた。

「俺達は狩りの一族だし、
 俺も肉は大好き。
 調理法はガーリック炒めが一番好き!!」
「……はあ」
「だけど、
 命には感謝しなきゃ、って
 小さい頃からお祈りは欠かして無くて」

ごめんごめんと謝る。

「癖なんだよ。
 やっぱり狩りの後に
 あんな事されると嫌だよね」

気をつけるよ、と。

「いえ、良い事だと思うわ」
「でも狩った本人ならともかく、
 自分が狩ったのに他人に祈られると嫌じゃない?」
「状況によるかも」
「でしょ」

ふふ、と笑いが漏れる。

「もしかして、狩りの訓練でも?」
「一回やっちゃってさぁ」

響の狩りは
良くも悪くも
行儀の良い狩りだ。

武器の扱いは癖が無く、
教師から教わった姿勢の良い使い方をしている。
性格も少しおっとりした所はあるが
村長の息子という事を鼻にかけるような事は無い。

育ちが良いのだろうな、と律葉は思う。

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