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「涼と誠治」28

2019年01月18日 | T.B.2019年


「黒髪のお前に何を出来る!」
「西の厄介者が!」

「やめておけ、涼!」

「いや、たいしたことじゃない」

 その言葉に、山一族の表情が一気に怖ろしくなる。

「何を、」
「何を、……」

 涼が云う。

「試して、みるか?」

 それでも、涼は武器を取らない。
 ただ、手を差し出しているだけ。

「村長さえ許せば、全員殺してやる」
「お、おい!」
「今は自分の身を守れ、誠治」

 涼は耳を澄ます。

 人数と位置を確認する。

「誠治が云う、山一族……」
 涼が首を傾げる。
「では、ないな」

「何」

「元、山一族……?」
 涼はさらに呟く。
「山一族の格好をした、別の一族も、いる」

「何を云うんだ、涼!」

「本当の山一族はひとりもいない」

「え?」

「最初に会ったときから違和感があった」
「それは、どう云う、」

「……裏一族、だよ」

 涼と誠治は、山一族、
 いや、裏一族の方を見る。

「そうだろう、裏一族?」

「…………」

「何だ」
「勘がいいな」

「そう」

「俺たちは」

「……裏一族、だ」

 誠治は息をのむ。

「裏、一族……」

 瞬間

「誠治っ!」

 涼は誠治を弾く。

 その力で、誠治は倒れる。

 頭上を、矢がかすめる。

「さあ、そこまで知ったんだからもういいだろう」
「終わりにしよう」

 山一族のひとりが走り、剣を振りかざす。

 涼は、その山一族を避ける。
 そのまま、剣を取る。

 続けて来た山一族を、その剣が切る。

「誠治走れ!」

「生かして返すな!」
「殺せ!」

 涼は、誠治を掴む。

「涼っ」
「立て、誠治!」

 涼は地面を蹴る。

「わぁあああっ!!」

 涼と誠治は、下り坂の斜面を一気に転がる。

「どこへ行った!」
「追いかけろ!」

 雨が降っている。

 視界は悪い。

 斜面のくぼみで、涼と誠治は止まる。



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