「黒髪のお前に何を出来る!」
「西の厄介者が!」
「やめておけ、涼!」
「いや、たいしたことじゃない」
その言葉に、山一族の表情が一気に怖ろしくなる。
「何を、」
「何を、……」
涼が云う。
「試して、みるか?」
それでも、涼は武器を取らない。
ただ、手を差し出しているだけ。
「村長さえ許せば、全員殺してやる」
「お、おい!」
「今は自分の身を守れ、誠治」
涼は耳を澄ます。
人数と位置を確認する。
「誠治が云う、山一族……」
涼が首を傾げる。
「では、ないな」
「何」
「元、山一族……?」
涼はさらに呟く。
「山一族の格好をした、別の一族も、いる」
「何を云うんだ、涼!」
「本当の山一族はひとりもいない」
「え?」
「最初に会ったときから違和感があった」
「それは、どう云う、」
「……裏一族、だよ」
涼と誠治は、山一族、
いや、裏一族の方を見る。
「そうだろう、裏一族?」
「…………」
「何だ」
「勘がいいな」
「そう」
「俺たちは」
「……裏一族、だ」
誠治は息をのむ。
「裏、一族……」
瞬間
「誠治っ!」
涼は誠治を弾く。
その力で、誠治は倒れる。
頭上を、矢がかすめる。
「さあ、そこまで知ったんだからもういいだろう」
「終わりにしよう」
山一族のひとりが走り、剣を振りかざす。
涼は、その山一族を避ける。
そのまま、剣を取る。
続けて来た山一族を、その剣が切る。
「誠治走れ!」
「生かして返すな!」
「殺せ!」
涼は、誠治を掴む。
「涼っ」
「立て、誠治!」
涼は地面を蹴る。
「わぁあああっ!!」
涼と誠治は、下り坂の斜面を一気に転がる。
「どこへ行った!」
「追いかけろ!」
雨が降っている。
視界は悪い。
斜面のくぼみで、涼と誠治は止まる。
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