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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「律葉と秋葉と潤と響」17

2019年01月08日 | T.B.2024年

「年末のお疲れ様会」

へぇ、と潤が言う。

「……そんな事していたんだ」

そうだよ、と律葉は続ける。

「私の家に集まって、
 ご飯はそれぞれ家から持ち寄って」
「ふぅん」
「響が持ってきてくれた茶葉、
 あれ、きっと高級な物よね。
 秋葉の家のスィートポテトも美味しかったなぁ」
「姉さんが作ったのだろうね」

そう言って、
潤は草陰に身を潜ませる。

いけない、狩りの最中だった、と
律葉も矢筒から矢を取り出し
すぐにでも狙いを定められるようにする。

獲物を挟み撃ちに出来るよう
潤と秋葉は向こう側に回っている。

寒さも峠を越し、
気候も暖かくなってきたので
久しぶりの狩りが行われている。

「………」
「………」

狩り自体もそうだが、
潤との狩りが久しぶりなので
少しおしゃべりになってしまったかもしれない。

彼との距離感はどうだっただろうか。

読み誤ったかなぁ、と
律葉は首を振る。

まずは狩りに集中しなくては。

「ねぇ、潤、むこうの草むらの方」
「あぁ。あのあたりに居そうだな」

潤が向こう側に居る響達に
囲い込んで
こちらに追い込むように、合図を送る。

「………ところで」
「ええ」
「その流れの
 俺のお帰りなさい会ってどうなったの」
「…………」

「おーい、そっち
 行ったよ!!!」

響達に追い込まれた獲物が
こちらに逃げ込んでくるので
2人はそれぞれに武器を構える。

矢を番えながら律葉は答える。

「もしかして拗ねてたの!?
 不満からの沈黙だったの!?」

潤も武器を構えながら言う。

「だって、俺の居ない間に
 残りの3人でお疲れさま会とか、ずるくない!?」
「だから
 お帰りなさい会をしようって!!」
「それっていつ!?
 年明けとっくに過ぎてるんですけど!!」
「それは潤が
 狩りがないなら年越しは南一族の村で過ごすって
 帰ってくるのが更に1ヶ月遅くなったからでしょ!!」

律葉の矢が獲物に当たる。
が、それは僅かに動きを止めるだけで
決定打にはならない。

「響からその話聞いて
 それなら俺もって
 パイ焼く練習してたんですけど!!」

潤の一撃で獲物は動きを止める。
秋葉と響も近寄り、
動きを見る。

最後の仕留め時は
どんなときにも油断してはいけない。

「「「「…………」」」」

その動きが完全に止まったのを確認して
響が呟く。


「潤って、パイとか焼くんだ」


そう言うわけで、と
律葉は父親に言う。

「潤の家でお帰りなさい会をするの」
「またか」
「前回とは趣旨が違うの」
「いい加減にしたらどうだ」
「料理は自分で準備するから」

前回は確かにおもてなしと言うことで
父親にも手伝って貰ったので
手間はかけたが。

「そうじゃない」

すこし呆れたように父親が言う。

「狩りの班は決められたことだから
 どうこうは言わないが、
 普段の付き合いまで親密になる必要は無い」
「そんな。
 みんなで集まってご飯食べるだけよ」
「深入りをし過ぎるな、と言ってるんだ。
 後からきつくなるぞ」
「………お父さんは過保護なのよ。
 断るべき所は断れるから大丈夫よ。
 ごちそうさま!!」

ふん、と律葉は立ち上がって
食器を片付ける。


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