高くそびえる樹。
生い茂る草。
山の中で、誠治はひとり。
「おお、西一族の誠治か!」
その誠治の前に、
ひとりの山一族が現れる。
以前に、山の中で会った者。
いや、それから、……何度も会っている、のか。
もはや誠治とは顔見知りのように。
「約束通り来てくれたな!」
「これ、……」
誠治は、一枚の紙を差し出す。
「それも約束通り!」
山一族は、馬を下りる。
「んん。やるな。次期村長候補」
山一族は、誠治に近付く。
誠治が差し出した紙を受け取る。
「確かに、受け取った」
「で、」
誠治は、山一族を見る。
「そちらのものは」
「うちのもの?」
「そう云う約束だろう!」
「何の話だ?」
「……え?」
誠治の顔が曇る。
「西の情報を出せば、山の情報も出すと!」
山一族は薄ら笑う。
「それを、西の村長に差し出して、褒美でももらうつもりだったんだろ」
「…………」
「俺は諜報も出来る、てな」
山一族は、誠治が差し出した紙を見る。
そこには、誠治が次期村長候補として学んだこと。
今の誠治に伝えられている、西一族の諜報員の名。
「返せ!」
「おっと! 動くなよ!」
山一族は、手を広げて見せる。
「仲間を呼ぶぞ」
「っっ!!」
誠治は、山一族を睨む。
「はめたのか」
山一族は、笑う。
「俺を、だましたんだな!」
「お前もよく山を信じてくれた」
「く、そっ……」
誠治は武器を持つ。
けれども、大雨のあと。
足下は悪い。
冷たい風。
雨が近付いている。
「若い西一族に感謝するよ」
山一族は云う。
「西一族の貴重な情報だ。使わせてもらう」
「山一族、め」
「ふっ……」
「…………?」
「……お前、本当に俺が山だと思っている?」
「え?」
山一族が誠治に近付く。
その顔に剣を向ける。
「これで終わりだ」
「くっ、」
誠治は武器を握り直す、
が
身体が動かない。
ただ、汗が流れる。
誠治は目を強く閉じる。
「じゃあな」
「り、」
「ん?」
「――――、涼っ!!」
「は?」
その瞬間、
光
「…………っ!?」
山一族は後ろへ吹き飛ぶ。
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