何が、
起きたのか。
山一族は血を吐く。
誠治は目を開く。
「何、だ……」
倒れたまま、山一族が云う。
「何が起きた……?」
口の中の血を吐き出す。
やっとのことで、山一族は立ち上がる。
「こんな、もので……」
ふらつく。
が、その目は鋭い。
「!?」
「…………」
「誰、だ」
山一族は、自身の手を見る。
その手は、掴まれている。
「誰だよ、お前」
握られた山一族の手には、先ほどの紙が。
「西一族、……」
黒髪の
――――涼。
「いつの間に俺の横に」
「この紙を、」
「…………?」
「返せ」
「っ、うわぁあああっっ!」
思わず、山一族は涼を突き飛ばす。
何かの、痛み。
「涼っ」
もはや紙はない。
広げたその手のひらには、
灰。
手のひらは焦げ、うっすらと煙が見える。
突き飛ばされた涼は、立ち上がる。
「黒髪……」
「誠治、武器を離すな」
「お前、」
「あちらは本気だ」
「…………」
「俺たちを殺すつもりだ」
「それは、正解」
山一族は、再度、血を吐き出す。
「おい!」
山一族が叫ぶ。
「黒髪の西一族だぞ!!」
涼と誠治はあたりを見る。
と
音。
草木が音を立てる。
影から何人もの山一族が現れる。
その動きは速い。
涼と誠治は囲まれる。
「動くなよ」
山一族は剣を持ち直す。
ゆっくりと、ふたりに近付く。
「時間がない」
「苦しまずに殺してやる」
誠治も剣を強く握る。
けれども、状況は悪い。
額から汗が流れる。
涼は、誠治を制止する。
その様子に、山一族が笑う。
「諦めたか、黒髪」
涼は、ただ、手を差し出す。
その手には、何も握られていない。
「涼っ」
誠治は焦る。
「剣を取れ!」
「そうだ、黒髪」
山一族が云う。
「剣を取れ」
「こちらも、心が痛い」
「涼、」
「どうせ、死ぬがな!」
山一族がさらに近付く。
涼が云う。
「誠治は逃がせ」
「何を云う!」
「俺が身代わりになる」
「だから、何を!」
山一族は剣を鳴らす。
「誠治こそ、殺さねばならん!」
「俺が相手をしてやる」
「はっ、黒髪が!」
山一族はおかしそうに笑う。
雨が、降り出す。
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