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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「規子と希と燕」9

2014年11月25日 | T.B.1961年

燕の所に、山一族から花嫁が来る。
西一族と山一族の協定を確かな物にするために。

「燕……、いつ」

燕にはすでに話があっていたのだろう。
だが、そんなそぶりは少しも見せなかった。

「うん、いつだったかな。
 一ヶ月前ぐらい」
「そんなに」

どうして気がつかなかったのだろう、と
規子は言葉を詰まらせる。

「相手の人はどんな人?」
「分からない、会ったこと無いから」
「名前や歳は?」
「さぁ、村長は知っているんじゃないのかな」

それは、犠牲じゃないかと規子は思う。
燕も相手の花嫁も。
お互いのことは何も知らされず、
ただ、村のために。

それでも、燕は言っていた。

自分の事は色々考えていると。

「燕、は、誰か好きな人いないの」

それならば、つらいのではないだろうか、
そう思って規子は口を開くが、燕が驚いた顔で振り返る。

「……えぇえ。
 それ!!規子が聞くかな!!」

「―――大変だなお前」

2人の会話を黙って聞いていた山一族が
たまりかねて口を挟む。

「何よ、二人して」

「いいのいいの。
 それでこそ規子だなーって感じ」

燕の言葉に山一族も笑う。

「燕と言ったか、お前、変わったやつだな」
「……よく言われる」

そのまま山一族は燕をのぞき込む。

「お前のその瞳は混ざり物か?」

西一族にも山一族にもあるはずのない。
敵対する東一族の色。

「血が混ざっている訳じゃないんだ。
 でも、俺だけこんな色」
「ふぅん、つまり、
 やっかい払いついでに、
 変わり者に押しつけたって事か」

「ちょっと!!」

声を上げかけた規子を制して、
山一族は続ける。

「でも、お前なら
 安心できそうだ」

どこか満足そうに言い、山一族は燕に頭を下げる。


「嫁ぐのは俺の妹だ。よろしく頼む」


そうか、と燕は笑う。

「大事にするよ、約束する」



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