ファミリーマートはコンビニエンスストアの運営効率を高めるため、全1万7千店で商品を並べやすいスライド式の陳列棚などの省力化設備を導入する。2019年2月期の既存店の投資額を前の期に比べ2倍の600億円超に引き上げる。コンビニでは客数が長期間にわたって停滞し、人手不足も続く。働きやすい環境を整えることで競争力の向上につなげる。
既存店への投資では省力化を柱に据え、おにぎりやサンドイッチ、カップ麺などの陳列棚を引き出し可能なタイプに取り換える。コンビニでは商品の陳列作業に時間を要しているため、売り場に並べたり撤去したりする作業を効率化する。冷蔵の紙パック飲料の売り場では客が商品を取り出すたびに、自動で商品が最前列に並ぶ棚も導入する。
主力商品のフライドチキン「ファミチキ」などの揚げ物を店内で調理するフライヤーを従来の2倍の容量にして、商品を作る回数を減らせるようにもする。検品作業を不要にする運用も始める計画だ。一連の省力化によって、1店舗当たりの作業時間を3.5時間減らす効果を見込んでいる。
ファミマが既存店向けの投資を増やす背景にあるのがコンビニ市場の伸び悩みだ。大手7社の既存店客数は2月末まで24カ月連続で前年を下回る。出店拡大を続けるコンビニ同士の競合のほか、ドラッグストアやインターネット通販に客を奪われているとみられる。
客数の伸び悩みに小売業を取り巻く人手不足や人件費の上昇も加わり、加盟店の経営環境は厳しさを増す。経営難に陥る既存店が増えれば、コンビニ市場が持続的に成長していくことが難しくなる。
大手各社は既存店の省力化投資を進めている。セブン―イレブン・ジャパンでは2月までに70億円を投じ、自動の食洗機を設置スペースを確保できる1万3千店に導入。1日あたりの作業時間を約1時間減らした。ローソンでは4月中にも都内でスマートフォンを活用した無人レジの実験を始める。店員の操作が容易な新型レジも19年2月末までに全1万4千店に導入する。