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乃木坂46『Route246』を聴く。小室哲哉作品の思い出。(ときめき研究家)

2020-08-02 16:07:17 | ときめき研究家
乃木坂46の新曲。配信限定発売。
今回の曲の注目点は、やはり小室哲哉作曲ということだろう。
小室哲哉は一時期のJ-POP界を席巻したが、アイドルへの提供楽曲は意外に少ない。
当時から私が好きだった曲は以下の3曲だ。

『Follow me』(沢口靖子/1988)。
今ではすっかり京都府警科捜研のオタク技師だが、まだ彼女が清純派若手女優だった頃の楽曲。女優の余技として歌うには明らかに難しすぎる歌だった。それでも「夜のヒットスタジオ」でも生歌を披露し、強烈な印象を残した。安田成美の『風の谷のナウシカ』に比肩する。女優としての演技力と、歌手としての表現力は別物だということがハッキリ分かった。薬師丸ひろ子などは例外だ。
それでも私は『Follow me』という楽曲と沢口靖子の歌唱がずっと好きだった。こんなに頼りなくたどたどしい風情で「付いて来い」と言われたら、心配で付いて行くしかないではないか。
小室哲哉独特のポジティブな節回しやサウンドが心地よく、沢口靖子の絶妙な歌唱と奇跡的なマリアージュが実現している。狙ってできるものではない。

『愛を今信じていたい』(堀ちえ/1987)。
堀ちえみのアイドル時代最後の作品。何か吹っ切れたような爽やかな歌唱だという印象があった。
作詞は秋元康。「あなたがいなくても一人じゃない」。どうとでも取れるような曖昧な歌詞の中に、旅立ちの決意を滲ませている職人技は認めざるを得ない。彼はこの頃から今まで何曲卒業ソングを書いたのだろうか。
小室哲哉の曲調とも非常にマッチしていて、最後にいい曲を与えられて良かったなという感想を抱いたことを思い出す。

『ドリームラッシュ』(宮沢りえ/1989)。
まだヌード写真集も発売していない頃、満を持して発売されたデビュー曲。普通のアイドル歌手とは違うのよと言わんばかりに、差別化された力作だ。
イントロからじわじわと期待感が募って行くようなサウンド。同時代の少女たちへの応援歌と言うべき歌詞と小室サウンドがシンクロして、素晴らしいクオリティーの楽曲だった。
歌唱は、技術的には決して上手ではない。でも、彼女の勢いと、圧倒的な可愛らしさの前には些細なことだ。アイドルポップの黄金期である1980年代の最後を飾る名曲とさえ言えるだろう。

小室作品のヒット曲としては、小泉今日子『Good Morning-Call』(1988)や中山美穂『JINGI・愛してもらいます』(1986)『50/50』(1987)があるが、実は当時は小室作品だという認識がなかった。今思うと彼らしい節回しは感じられるが、当時は小泉今日子や中山美穂のヒット曲の1つとういう認識でしかなかった。そこまで作家性を主張していなかったのだろう。

そして2020年の今、乃木坂46『Route246』である。
それなりの期待をして聴いたが、辛口の評価をせざるを得ない。
「小室哲哉が久しぶりにアイドルに提供した楽曲」という期待には充分応えている。イントロのシンセサイザーからして、いかにも「らしい」曲づくりだ。節回しも小室らしい、どこかで何回も聴いたようなメロディーの連続だ。それは悪いことではない。小室らしい楽曲を安心して堪能できた。
一方で、期待を裏切る「何か」が全くない。
特に歌詞がよくない。半分以上が英語で、そのうち半分が「WOW WOW」だ。日本語部分を一所懸命聴いても、何を言いたいのかほとんど分からない。そもそもタイトルに必然性がない。国道246線が舞台なのだろうが、246号線のどの辺なのだろうか。渋谷なのか、厚木なのか、それとも沼津か?「ヘッドライト」「ショウウインドウ」「この通りで誓ったことを」などのヒントはあるものの、車に乗って走っているのか、歩いているのかさえ読み取れない。何となく、自分らしくポジティブに生きて行く決意を歌っているのだろうなとは分かる。そしてそれは乃木坂46得意の世界観だし、小室哲哉作品と親和性が高いテーマでもある。
小室が曲調を変えることはないし、それを求めるのでは彼に依頼する意味がないのだから、歌詞の方に期待を裏切る一工夫がほしかった。
コメント
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