新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

語学屋のくりごと

2015年08月16日 | 日記

 藤野に日連という地区があります。「ひづれ」のカナをふるのがふつうで、「ひずれ」とはふりません。日連入り口の道路に掲げたこの地区名のローマ字表記がなぜだかHizureになっています。私がパソコンで使っているワープロソフトではhizureと入力しても日連に漢字変換されません。hidureと入力すれば正確な漢字に変換されます。これが私には腑に落ちません。訓令式ローマ字表でもヘボン式ローマ字表でも「づ」はzuと表記することになっていますから、日連をHizureとローマ字表記するのは間違いではないようです。
 ローマ字表とワープロのローマ字変換とは必ずしも一致しないのでしょうか。そういえば「トゥモロー」などとワープロで打つときにみなさんはどうしていますか。私はトゥを出すとき、トを先に打ち、l(エル)ウ (littleウの意か) と打ってトゥを出しています。もっと簡単にトゥを出す方法があるのでしょうか。
 炭遊舎をtanyushaとして使いつづけてきましたが、これではタニューシャと読めてしまいます。やはりtan’yushaとするのが正しい書き方なのでしょうが、めんどうだからアポストロフィなしの書き方を通してきました。

 ローマ字には訓令式ローマ字と、ヘボン式ローマ字がありますね。訓令式というのは昭和28年に内閣が定めたもので、それ以来ずっと小学校4年で教えています。ヘボン式というのは明治のはじめにアメリカから来た宣教師ヘボン(Hepburnヘップバーンとも)がつくり出したもので、出版物などで明治以来使われつづけてきています。道路標識や駅名などすべてが一貫して明治以来のヘボン式を使いつづけるなかで、小学生に訓令式を教えるものだから混乱してしまいます。昭和28年というのは1953年です。それ以来62年にわたって学校では訓令式を教え、社会ではヘボン式を使っているという事態はちょっと異常ではないでしょうか。
 ヘボン式ローマ字は発音に忠実だという人がいます。まさか、それはないでしょう。英語を中心に考える人がそういう誤謬に陥る傾向があります。考えてみてください。chiはほんとうにチと読めますか。China(チャイナ)でチャイと読んでおいてChicago(シカーゴウ)ではシと読み、orchid(オーキッド)ではキと読んでいます。英語以外の外国語をもち出すまでもなく、chiの読みかたがチだけではないことが分かります。
 今度は逆に考えましょう。チの表記はchiがよいのでしょうか、それともtiがよいのでしょうか。タチツテトはタ・ティ・トゥ・テ・トではないのですから、ta・chi・tsu・te・toと表記する方が発音に忠実だという理屈が分からないわけではありません。たしかに
ツァ行 ツァ・チ(ツィ)・ツ・ツェ・ツォ
タ行  タ・ティ・トゥ・テ・ト
の2行が相補い合ってタチツテトができあがっているようです。それでもそれが日本語の音韻体型です。それをもっとも簡潔な表記にしたタチツテトがタ行を形作っているのですから、これをta・ti・tu・te・toと表記するのがもっとも簡略で、十分に意味がある表記法だといえます。
 言語学者たちが議論をつくして出した結論が訓令式ローマ字であり、だからこそ日本語正書法の一環として学校で教えられてきました。ところがその訓令式ローマ字が少しも日本の社会に定着しないのはなぜでしょうか。私は英語一辺倒の外国語教育をしてきたためだと思っていますが、これについてはまたの機会にします。
 八王子をローマ字で表記するとしたらHachiojiがよいか、それともHatioziがよいかといわれれば、ふだん見慣れているHachiojiに軍配を上げたくなります。藤野はFujinoであってHuzinoとは書きたくありません。慣れというのは恐ろしいものですね。






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