新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

原田マハ

2022年03月08日 | 日記

 ガラガラの新幹線ひかり号自由席で読書にふけった。快適で豊かな時間だった。
 原田マハ「楽園のカンヴァス」を読了した。私が読んだ原田マハ作品はこれが2作目になる。1作目、美術作品をモチーフにした小説がめずらしいので興味を惹かれ、2作目の長編へと移行した。すばらしいミステリーだ。
 アンリ・ルソーの絵画「夢」をおもなテーマにし、それとそっくりだが実在しない絵画「夢をみた」を登場させる。ルソーを見いだした若き日のパブロ・ピカソが登場し、ルソーがピカソ作品にかぶせて「夢をみた」または「夢」を描いたのではないか、すなわちどちらかがピカソとルソーの二重作品ではないか、という突拍子もないテーマで読者を惹きつけて離さない。
 主人公はマンハッタン現代美術館に勤めるうだつの上がらないアシスタント・キュレーター、ティム・ブラウン。上司トム・ブラウンとは一文字違いで、「ティム・ブラウン様」と宛名書きされてはいるが上司トムに来たに違いない手紙を自分あてのものにしてバーゼルでのアンリ・ルソー作品の真贋判定への招待に応じる。もうひとり、パリの大学でアンリ・ルソーを研究し、優れた論文を発表している早川織江もバーゼルへ招待される。
 その後、舞台は1906年にまで遡り、ルソー「夢」の裸婦のモデルになったヤドヴィガという貧しい家の女性が登場し、その夫ジョゼフのすすめでルソーのモデルを務めることになる。夫のジョゼフは美術作品を画家のアトリエから美術画廊などへ配達することを生業にする配達員だが、無名の画家ルソーの才能にいち早く気づき、みずからの貧しい生活を切り詰めながらルソーの画材購入の援助をしている。
 原田マハの小説には美術作品への愛が込められている。それに手の込んだプロットにも惹かれる。めずらしい推理小説に出会ったと同時に、すばらしい画家、絵画作品に巡り会わせてもらった。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿