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海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

アサド大統領の演説(テキスト)2011年3月30日

2016-11-28 18:30:05 | シリア内戦

《Speech to the Syrian Parliament by President Bashar Al-Asad,30March2011》

最近の出来事が国民と子供たちの命を奪ったことに対し、悲しまずにはいられません。

国民が私の考えを直接聞きたがっていることを、私は知っていました。私は事件の全体像を把握するまで、敢えて今日まで話しませんでした。感情に流されて話せば、国民が喜ぶのを知っていましたが、それは事態を好転させることにはならず、解決にもなりません。我々の敵はシリアを不安定にするため、日々組織的に、計画的に働いています。彼ら策謀は極めて洗練されており、高度な技術を用いています。しかし我が国に陰謀を仕掛けたことは、愚かでした。そのような陰謀はシリアでは成功しないからです。彼らは敗北し、シリアは勝利するだろう。

最近数か月アラブ世界で起きている大変動について、敵はよく知っている。これらの事件はアラブのすべての国に影響を与え、その影響は世界に及ぶだろう。当然シリアにも直接関係する。

混乱が起きたのは、政権に対する国民の同意がない国においてであり、国民の同意がある政権は安定している。シリアではいくつかの点で国民の不満があるが、大部分の国民は政府を信頼している。

アラブの3つの国で起きた最近の変動の原因は、アラブの人々がこの3040年間貧困化したからである。

アラブ3国でデモが起きた時、アラブの指導者たちはそのことを軽く見ていた。街路や広場での抗議をメディアが取り上げ、国民全体に影響を及ぼす。このことに注意すべきだ、と私はアラブの指導者たちに助言したが、彼らは意に介さなかった。今になって、彼らは私の助言が正しかったことに気づき、困っている。

アラブの人々はこれまでひどい状態にがまんしてきたが、現在飼いならされるの拒否している。アラブ世界にある貧富の格差を埋めなければならない。

アラブの中心的な問題のもう一つは、パレスチナ人の苦境である。アラブ諸国が譲歩を重ねたことに、アラブの人々は怒っており、パレスチナに正義が実現することを願っている。

 

シリアはアラブの一部であり、アラブ諸国との間で互いに影響を与え合っている。しかしシリアは他のアラブ国家のコピーではない。アラブ各国はそれぞれ違う。特にシリアは、国内的にも国際的にも、他のアラブ諸国と異なっている。

我が国の国内政策は、経済発展と開かれた社会を目標にしており、私は直接国民と話すことにしている。すべてうまく行っているわけではなく、解決されていない課題もあるが、この2つの方針が政策の柱であることに変わりがない。

 

シリアの外交の基本は、国家の権利を主張することである。それとともに全アラブの権利を主張し、アラブの土地が侵略された場合、その地の住民の抵抗運動を支援することである。シリアの外交はシリア国民の意向を反映している。国民重視という点で、内政と外交は共通している。市民を中心としない国政は誤った方向に進んでおり、政府はただちに修正しなければならない。

この方針は正しく、シリア国民は前例のない団結を示した。最近数年シリアに対する対する圧力が強化されたが、シリアは守られてきた。また外交の進路にある地雷原を撤去することができた。

 

最近シリアで起きたことについて正確な情報を提供したい。衛星テレビが「アサドは最近の事件を外国の陰謀が原因だと語った」と報道すると思うが、国民には事実を知ってもらいたい。

まず陰謀の中心的メンバーと彼らの背後関係について話したい。私が敵の陰謀を暴露すれば、敵は別の手段を用いて、私の主張を弱めようとするだろう。戦っている時は敵について理解しようとするものであり、敵の次の動きにも敏感になる。戦いが終了すると、特に勝利した後では、敵が次に何を準備しているか、注意を払わなくなる。これまで敵の陰謀をはねのけてきたように、今回も外国が計画している企みから国民をまもらななければならない。

周知のように、現在シリアに大きな陰謀が仕掛けられており、敵は隣国だけでなく遠方の国々も誘っている。また国内の人間にも触手をのばしている。陰謀の黒幕たちは、アラブのいくつかの国が混乱している現在がチャンスだと考えている。

アラブ世界で新たな革命が流行している。したがってシリアで起きることも革命だと誤解されてしまう。革命という名の陰謀は、いつもやり方が同じで、「自由」というスローガンを利用する。

自由の旗印のもとに改革が叫ばれると、実際に起きていることを知らずに、多くの人が同調してしまう。シリアの敵は3つの要素を巧妙に混ぜ合わせた。国民の代表としてこの議場にいる人々は、この点について詳しく知っている。皆様の認識と私の認識にギャップが起きないよう、これまで私が入手した情報を提供しておきたいと思います。

3つの要素とは、反乱、改革、不満です。シリア国民のほとんどが改革を要求しています。この議場にいる議員は全員改革に賛成しています。

大部分の国民は不満を抱えています。我々指導部は国民の要求に答えることができていません。我々は互いに議論し、批判し合うだけで、合意に達していません。そういう時に反乱が起き、反乱は他の2つの要素を取り込みました。改革の実現と不満の解決を旗印にかかげ、反乱は真の目的を隠したのです。

最初にデモをした人々のほとんどは善意でした。一部の人間が彼らを利用したのです。

当然ながら、陰謀を行なっているのは少数の者です。破壊行為が明らかになるまで、政府の人間さえ、何が起きているか理解していませんでした。その後徐々に状況がはっきりしてきました。改革を求める者が破壊行為をするでしょうか。改革を求める者が人を殺すでしょうか。

また奇妙なニュースが流れています。ある建物が攻撃された、と衛星テレビが伝えましたが、その建物は攻撃されていませんでした。放送の一時間後にその建物が攻撃されました。テレビ局は将来起きることを知っていたようです。こうした予言放送は一度だけではありません。こうしたことから真実が明らかになりました。

私が今述べていることは陰謀論だと言われそうな気がします。しかしこれは単なる議論ではなく、陰謀が実際に存在するのです。

 

この状況に対処するのは困難でした。我々が外国の煽動と戦っていても、国内の改革派と戦っているように見えたからです。政府は改革を支持しており、国民の必要を満たしたいと考えている。これは政府の義務である。しかし外国の煽動を容認することはできない。シリア国民はもともと賢明であり、愛国心を持っている。実際に起きていることを国民が知っていたら、事態を収めることは容易だったろう。政府が行動を起こす前に、国民が自ら対処していたろう。ご存じのように、政府は行動を抑制し、対応を国民に任せた。健全で愛国的な対応により、国民の団結の早期の回復に導いた。

現在は陰謀の第一段階か、第二段階なのか、私にはわからない。しかしシリアが弱体化し、国内が分裂する時が最終段階であることは間違いない。その日が来るまで、敵は陰謀を続けるだろう。彼らにとってシリアがじゃまなのである。イスラエルの計画にとって最後の障害物を取り除くことが、彼らの目的である。

我々は個々の出来事に興味がない。なぜなら、彼らは陰謀を続けるにきまっているし、これまえであれこれのやり方でやってきたことを、今後も繰り返すだろうからだ。彼らは毎回経験を積みかせね、巧妙になっている。失敗するたびに、それを教訓として方法を改善している。

したがって我々も、彼らのたくらみを退けたとき、彼らのやり方を学び、次に備えなければならない。

 

具体的な話はするな、と多くの人が私に助言するが、私は透明性が必要だと思うので、こうした助言に従わない。

シリアで混乱が始まるよりも数週間前に、敵は衛星テレビとインターネットを利用してデモを呼びかけたが、失敗に終わった。次に暴動を起こし、偽の音声や画像を含んだ情報を流した。また宗派争いを起こすために、別の宗派が襲おうとしていると、ショート・メッセージを送った。他宗派からの襲撃があるという話に真実味を与えるため、覆面をしたグループを送った。それから一軒一軒を訪問し、襲撃が始まったと言った。最初このデマは成功したが、我々はすばやくこの煽動をつぶした。地域の指導者たちが状況を人々に説明したので、人々は安心した。

偽情報作戦が失敗したので、彼らは武器を取り、住民を無差別に殺し始めた。死者が出ると、解決が困難になると考えたからである。

陰謀はよく組織されており、外国とと結びついた支援グループが複数の県に存在する。メデイア班は偽情報を流し、「目撃者」グループは嘘の証言をする。

 

敵はダラア県で仕事を始めた。ダラアは国境地方であるが、すべてのシリア人にとって大切な地方である。シリアの敵イスラエルと接しており、祖国を守る最前線である。ダラアとクネイトラハシリアをイスラエルから守っている。祖国を守るべき位置にあるダラアで、祖国に対する陰謀が行われることは許されない。ダラアで起きたことに、住民は責任がない。しかしかれらには、政府と共に陰謀を終わらせる義務がある。政府とシリア国民がダラアを応援している。ダラアの人々は真の愛国者であり、威厳があり、寛大である。混乱を引き起こし国家を破壊しようとする少人数は住民全体によって抑え込まれるだろう。

 

陰謀グループはラタキアとその他の都市でも活動を始め、殺人や脅迫を行い、反乱をそそのかした。市民に武器を使用してははならない、と治安部隊は命令されていた。しかし市街地での反対運動の場合には対話が難しく、事態は混乱してしまう。一時の過ちがそれで終わらず、連鎖反応が起きて、人々が死んだ。

 

デモで死んだ人々はシリア人であり、我々の兄弟であり、家族です。彼らの死は我々の悲しみです。この事件の原因を探り、事件の背後にいる者を知ることは重要です。

現在起きていることは、2005年の事件に似ています。当時敵はメディアとインターネットを駆使して我が国を屈服させようとしました。インターネットは当時あまり普及していませんでしたが。彼らは我々にこう思い込ませようとしました。「勝敗は決まった。これ以上戦っても無駄だ。我々は敗北を受け容れるしかない」。

目的はおなじですが、今回は国民の様々な不満を利用しました。改革の名のもとに、混乱を助長しました。同時に宗派争いに火を付けました。宗派問題に人々は敏感であり、衝突を引き起こすのは容易です。

2005年には国民の理解があり、外国の陰謀を退けることができました。しかし現在の事態はもっと複雑です。インターネットが普及し、宣伝方法が高度になったからです。国民が賢明でないなら、偽の情報が勝利するでしょう。

愛国的な国民の知性こそが、様々な局面で、シリアを守るでしょう。

現在起きている反乱は、誤解と悪意ある宣伝によるものであり、国民が真実を知ることで解決するはずです。

 

現在変革の嵐がアラブ世界に吹き荒れています。これには、よい面と危い面があります。この波にただ流されるのではなく、この波を導かなければなりません。この波がシリアに到達した時、そのエネルギーをシリアの利益に役立てなければなりません。変革の波を消極的に受け入れるのではなく、積極的に取り組むのです。

この方針に沿って、政府はいくつかの改革を発表しました。昇給、政党に関する法律の改定、戒厳令の廃止などです。政府の決定は政府の考えを反映しています。しかしコミュニケーションが不十分な場合、国民のためになる決定が、広報の失敗により、国民に理解されないけっかになります。

これらの改革は反乱があったから決定したのではありません。従来から検討されていました。政府は一時しのぎの対応をしてはなりません。何らかの状況に迫られたり、国民の圧力があるからという理由で国家の方針を決めてはなりません。それは政府の弱さです。国民の圧力に屈する政府は、外国の圧力に屈するでしょう。

そのような姿勢は間違っている。政府と国民の関係は圧力に基づいてはならない。国民からの圧力の有無にかかわらず、社会の正当な要求を政策に反映することことは政府の義務である。

国民の要求が正統なものである時、政府は喜んでそれにこたえる。もし要望に応えることができない場合、政府はそのように言うべきである。受け入れがたい要望もある。

そうは言っても、政府にとって国民の信頼がないことは大きなプレッシャーです。2005年の危機の際に国民が示した愛国心に政府は感謝しており、国民に報いたいと考えております。改革を実行することによって、国民に発展と繁栄をもたらしたいと思います。(続く)

 

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