韓国人の中には、「職人になるためには下積みから始めなければいけない」ということを頭では理解していても、実行できない人が多い。
留学先の有名なアパレル関係の専門学校でも優秀で作品が認められ、将来有望な学生として期待されていたが、日本の会社ならばまず、3~4年は下積みを経験させた上で、本業に就かせるだろう。
場合によっては10年以上かかるかもしれないが、長い目で見るだろう。
それなのにたった1週間で、「任された仕事が販売員だ」「それは自分の夢ではない」「早く結果を出したいから、辞めてデザイナーの仕事を探す」という甘い発想をしていた。
なぜ、彼は「販売員」を嫌がったのだろうか?
韓国は、物を売る販売員の立場や待遇がそれほど高く評価される社会ではない。
「客の世話をする」とうことは、客と自分との間に上下関係が成立して、時には客に見下されることもしばしば。
それが客にだけならまだしも、関係のない他人にまでそのように見られることもある。
また、韓国の会社は、日本の会社と違って、下積みの仕事を3年ほど経験して本業に就くのではなく、最初から自分の希望で配属された仕事をする。
そのような考え方を持つ韓国人の発想では、「販売する行為」は「留学する必要性はなかった」という、とんでもない発想につながる。
それも、職業に対する先入観や、すぐ結果を出したい、そして、待てない韓国人の性格から来る発想だろう。
ソウルにある日本の地方銀行の連絡事務所では、日本人所長1人と、韓国人の女子社員1人がいた。
女子社員は、韓国の名門私立大学卒業で、事務所に出社しても、掃除を一切しないという。
事務所長が掃除をするように言ったら、「私は大学を卒業した人間です。私はオフィスの掃除のためにこの会社に入ったのではありません」とはっきり言われ、掃除のおばさんをもう1人雇ったという。
客にお茶を出す仕事も、最初は嫌がったという。
開店前の銀行オフィスの前、社員一同がほうきで道端を掃除する姿は、以前、日本ではよく見かけられる光景だが、韓国では考えられない。
「韓国人が一生懸命に勉強する」という行動は、「よりよい職業に就く」というモチベーションから起きるもので、「よりよい職業に就くために、下積みも我慢する」ことは、自分のプライドを捨てることにつながり、韓国人にはなかなか受け入れられないようだ。