1970年代までの韓国女性のメイクは、日本とは逆に控えめだった。
70年代にソウルに行ったとき一般女性の化粧は控えめで、ホステスなどの女性はメイクが濃くて見分けが付きやすかった。
その韓国も、1980年代からだんだん化粧が濃くなっていった。
1988年、ソウル・オリンピックのころになるといわゆるコリアンメイクが出現し、高校を卒業するあたりから化粧を始めるようになった。
1990年代後半には、西洋を真似たオーヴァーリップスタイルで唇を強調するようになる。
実際よりもとりわけ下唇を大きく、たっぷりとルージュを塗り、西洋人の大きな唇に近づこうとするメイク法で、それならと、一方では唇を厚くする整形手術が流行した。
セクシーな大人の女を演出するダークレッドの口紅やブラウンメイクが好まれるようになった。
黒人モデルのナオミ・キャンベルは少なからぬ影響を韓国女性に与えた。
ナオミは日本ではすでに流行遅れになっていたが、韓国では依然として人気があった。
口を大きく見せるということは、女性の発言権、自己主張に大きく関係している。
これは伝統的美人のあり方とは正反対のものである。
朝鮮時代には美人は唇が「梅桃の実のように、赤くて小さくなければならない」と考えられていた。
女は大きな口などきいてはいけないという、男の女に対する要求が口を小さくさせていたことが、ここからわかる。
目に関して言うと、二重瞼にする整形手術が大流行している。
メイクも瞼のきわをアイラインでくっきりと描き、付け睫毛をするようになる。
日本人のように気さくに笑わずに、ツンとすましているのがいいとされる。
こうした化粧は現在の韓国社会に横たわっている無意識的な女性の欲望を反映している。
男性中心社会の中でいかに自己主張をしていくか、その積極的意思表示がすぐれて化粧となって表れている。
韓国は高いプライドと強い自己主張を求められる社会なのである。