韓国では、女性は結婚しても姓を変えない。
誰が夫であるかよりも、誰が父親であるかのほうが重要だからだと聴いたことがある。
これは逆にいえば、韓国社会のおける父権性の信じがたい強さを示している。
韓国の家族は、家系図である「族譜」をことのほか重要視する。
その思いの強さは、日本統治下で行われた創氏改名のさいに、実名を守れなかったとして自殺した、老両班がいたことが物語っている。
一方では、両班意識というエリート意識を重んじるあまり、族譜の偽造、捏造がなされることが現在までいくらでも存在していた。
だがこの族譜には近年まで、女性の名前は記されなかった。
女性は一族のうちに入れられなかったのである。
妻は男の子を産むための存在であり、娘はどこまでも父親の所有物と見られた。
したがって夫の姓をあえて名乗る必要がなかったのである。
また母親は子供を自分の戸籍に入れることができない。
離婚をしても、子供は父親の姓を生涯名乗り続けることになり、族譜のうえからは父親の家計の所有物である。
いうまでもなく、この徹底した父権性は習俗化した儒教に基づくものである。