インクルーシブな社会のために

障害の有無程度に関わらず支え合う社会へ ~ハマジョブネットワーク~

いのちの手紙

2007年05月05日 | 記事
最近、『いのちの手紙』という本を読んだ。
以前、障害者雇用をしていた企業が、その被雇用者に対し
虐待をし、ついには殺めてしまった事件があった。
著書は、これを追及する人々が、その企業だけでなく、
職業安定所、労働基準監督署、県行政に対しても訴え、
全面勝訴した経緯を記したものである。

自分も行政の立場にある人間として、
気をつけないといけないと思った。

障害者を支援する、という名の下、
健常者なら当然という常識を当てはめずに、
聖域化しすぎていないか?

たとえば、健常者であれば働くのは当然だし
最低賃金以上の賃金を得るのは当然だ。

だが、障害者だからといって、働かなくてもよい、
最低賃金未満でもいいと甘んじていないか?

もちろん、はっきり割り切れるわけではない。
その人の状況や能力によっては、
働けないこともあるだろうし、
他の従業員の働き分と比べて能力以上に賃金を支払うことは
不合理、ということもあるだろう。

それでも、障害がある人だって普通の人であることを忘れてはならない。
人としては普通。
ただ、ある面で、支援が必要、ということ。

支援が必要である場合には、行政はじめ地域や社会が
責任をもって支援をする。

オールオアナッシングで割り切れる問題ではないけど、
人間とは本来割り切れる存在ではないわけだし、
ケースバイケースで悩みながら現実に対処していくしかない。
少しでも一人一人の人間の尊厳をみんなで守っていこう。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「障害者」である前に1人の人間 (上ちゃん)
2007-05-07 22:22:18
ケースワークに従事する人にとっては当然知っているべき原則、『バイスティクの7原則』の中には、「個別化」の重要性があげられています。

考えてみれば当たり前ですよね。障害のある人も「障害者」である前に、1人の人間。全ての人の顔が違うように、考え方も、そして人生も、全く同じ人なんかいるはずない。「個別」なのは当たり前ですよね。
その1人の人間を支援する際に、たまたま障害があるだけで、「障害者」という枠でくくってしまい、支援という名のもとに支援者側の“都合”を押付けたり、個別化を無視してしまうことはあってはいけないことですよね。

でも、最前線の現場では、そのようなことが起きてしまう危険性が常に存在していると思います。本のような事件ほど悪質な事態は稀かもしれないが、多かれ少なかれ、個人を無視した押し付けをしてしまっていることはあると思う。恐ろしいことだ。

福祉の現場は、決まった正しい答えがないことも多いし、すっきりと解決できない難しい問題も多数存在します。私自身も不安になり、何かにすがりたい衝動に駆られてしまったり、時にはいい加減になり、自分の立場を濫用してしまいたくなる気持ちが芽生えたりした経験はあります。

だからこそ理念が必要になってくると思います。理念は往々にして現実的な実効力をもたないことがあり、「福祉の専門家は理念的なことばかり言って、ちっとも役立つことをしてくれない」などという意見も聞いたことがあります。それでも、人間の尊厳に立脚した理念をどこかで保っていなければならないし、たとえカッコいい言葉ばかり並べて嫌われたとしても、それが福祉職の専門性だと思います。

長くなってしまいました。いつかこの本を読んでみたいと思います。そして、自分も加害者になる危険性と常に隣りあわせでいることを忘れないようにしたいと思います。
返信する
ありがとうございます (江原)
2007-05-21 01:35:27
バイスティクの7原則、恥ずかしながら知らなかったので
にわか勉強しました。

1)個別化 2)意図的な感情表出 3)統制された情緒関与 4)受容 5)非審判的態度 6)自己決定 7)秘密保持

ですね。
なるほど、これって、福祉職じゃなくても、福祉に携わる人、行政マン、引いては人間誰もが理解すべきことのような気がします。
本を読んだら感想聞かせてくださいね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。