水際近くまで車で行ってみました。以前は漁に使っていたのでしょう、小さな漁船が放置されていました。そして死んでしまった貝の殻がたくさん転がり、腐った水草が堆積してズブズブになっています。なぜそんなところまで行ったのか、1台のトラックが車輪をとられて、立ち往生していました。このようすをみると、水の減少は急だったようです。ゆっくり進んでいれば、貝も死ぬことはなかったでしょう。
この年の4月末、北京で日 . . . 本文を読む
北京-大同を以前は夜行列車でいくか、車で8時間以上かけるかしかなかったんですけど、今世紀にはいって高速道路が完成し、飛行機も毎日飛ぶようになりました。便利になったんですけど、よくないことも起こります。
この写真は官庁ダムで、2004年3月のものです。それ以来、官庁ダムの横を高速道路で通りすぎることはあっても、なかにはいることはなかったのです。ですので、古い写真。実際の水際はここから1kmほど先に . . . 本文を読む
前回と同じ場所の写真で、2010年のものです。単純にそうはいえないとは思いますが、6年前に比べても、水は減っていますね。
2003年のことだったと思いますが、当時の日本大使館の公使からメールがありました。中国の記者たちに「大同は北京の水源としても重要なところです」と紹介したところ、「そんなことはありません」と反論があったのだそう。どう説明したらいいでしょうか、ということだったので、もし私だったら . . . 本文を読む
前回の固定橋から桑干河をちょっとさかのぼったところに応県があります。ここも私の定点観測の地点で、通るたびに水量を観察し、写真を撮っています。この写真、なんだと思います? トウモロコシ畑ですよね。でも、その先に橋があり、車が通っているのがわかるでしょ。
じつはここ、桑乾河の河底なんです。水が流れてこないのをいいことに、付近の農民が耕作をはじめてしまったんですね。河底ですから、土は肥えていますし、ふ . . . 本文を読む
河川という河川、ダムというダムから水が消えました。大同でいちばん大きな河は桑干河ですが、大同市の南の渾源県、広霊県、霊丘県へ向かうときは、かならずこの河を越えました。そのときに渡るのが固定橋です。ここを渡るとき、私はいつも水の状態を確認し、写真を撮っていました。
最後に流れらしい流れをみたのは、1997年夏です。テレビ朝日の取材クルーがきたとき、この河の畔で撮影したのです。付近の農民が濁流のなか . . . 本文を読む
村にポンプが届いたのは夕方だったそうです。全村の人が集まって、帰ろうとしません。しかたなしに技術者は夜を徹して取り付け作業に取り組んだそう。水がでたのは夜明け前の4時すぎだったそうです。
井戸のわきに立派な記念碑が建てられました。「水を飲むときは井戸を掘った人のことを忘れるな」と彫られています。
井戸を掘る前後に、日本からのツアーが訪れて、農家でホームステイしました。井戸を掘る前はたいへんな村 . . . 本文を読む
広霊県苑西庄村は高所の村です。もともとこの村には20本ほどの井戸があったそうです。スコップとバケツで掘った井戸で、深さは30mほど。私が最初に訪れた1996年には、その大部分が涸れ、水の出る井戸は4本だけで、1日にバケツ100杯しか汲めませんでした。住民は150人ほどでしたから、私が「1人あたりバケツ3分の2杯の水で生活しているんだ?」というと、「そうじゃない、家畜もいる」という返事が返ってきまし . . . 本文を読む
この地方の村の井戸は、以前は人力で掘っていました。たいていはスコップとバケツです。黄土ですからそんなにむずかしくない。30mあたりに最初の帯水層があります。そして、水がでたら、さらに深く掘るのは困難です。大事にその水を使っていました。
ところがその井戸が涸れる例が続出したのです。新しく掘る井戸は低いところにある村でも100m以上になります。高所の村では150m以上。なかには渾源県二嶺村のように3 . . . 本文を読む
飲み水に困る村もありました。私たちが2000年に7つの県の21の村で実施したアンケート調査では、「水に不自由せず、灌漑もしている」(42.6%)、「生活に困らないが、灌漑はできない」(47.4%)という回答が多く、「飲み水に困らないが、節約が必要」(18.3%)、「水に困り、もらい水に通っている」(3.6%)は少数でした。この数字だけをみると、「なんだ、たいしたことないじゃないか」となるかもしれま . . . 本文を読む
2回つづけて雨による被害について書いたんですけど、それはむしろ例外で、雨が降らないのがふつうです。1995年の水害のあとで、農村を回りながら農民に「こういう水害と旱魃(かんばつ)とどっちが怖いの?」ときいたことがあります。答えは「やはり旱魃だ」というものでした。
水害は見た目には激しいのですが、その範囲は狭いし、やってくるのもたまのこと。それにたいして旱魃は、毎年のようにやってきて、被害の範囲も . . . 本文を読む
犠牲者がでたり、家屋が倒壊したり、というほど劇的な被害でなくても、雨が引き起こす問題は大きいのです。年間降水量は平均400mmなんですけど、その3分の2以上が6月半ばからの3か月に集中します。そしてひどいときは、狭い範囲に短時間、集中的に降り、1時間に70mmを超すことがあります。ゲリラ豪雨という名称はここの雨にこそふさわしい。
植生の貧しい黄土高原にそのような雨が降ると、表土が流されてしまい . . . 本文を読む
これからしばらく水の問題について書くことにします。
大同の農村のことを話すとき、かならずといっていいほど取り上げるのは、陽高県の民謡「高山高」です。その2番にこうあります。「靠着山呀,没柴焼.十箇年頭,九年旱一年澇」(山は近くにあるけれど、煮炊きに使う柴はなし。十の年を重ねれば、九年は旱(ひでり)で一年は大水)。漢字ってすごいですね。たった16文字でこれだけのことを表せる。大同の農村はまさにこれ . . . 本文を読む
南水北調のこの部分はオープンな水路で、全体がフェンスで囲まれています。その横に、青地に白文字で「沿線に水を供給する国家の重要プロジェクトであり、国家の財産と人民大衆の生活の安全を守るため、関係のない人間と車両の立ち入りを禁じる」との公告が掲示されています。フェンスの内側に小さなテントが張られ、まだ幼さの残る少年が目を光らせていました。
そう。南水北調は長江水系の水を、水不足が深刻な中国北部に . . . 本文を読む
南水北調は、比較的水の多い長江流域の水を、水不足が深刻な中国北部、とくに北京・天津に送る国の大プロジェクトです。東ルート、中ルート、西ルートの3つが計画され、そのうちの前2者がすでに着工しています。
北京の水不足が深刻なうえに、工事が遅れたため、中ルートの石家荘と北京のあいだの工事が急がれ、水路が完成しました。そして石家荘市に属する崗南ダム、黄壁庄ダムと、保定市に属する王快ダムからの送水が、 . . . 本文を読む
ザンネンだったのは、ガスが濃くて、ダム全体のようすはまるでわからなかったことです。堰堤から突きだしている取水塔のあたりがやっと写真に写る程度で、湖面の広がりなどもまったくわかりません。
石を敷きつめた堰堤の内側に、水平の帯状に草のはえているところがあり、それから下には、草はありません。このすぐ下まで水があった時期がわりと最近にある、ということでしょうね。その線から現在の水面までは、深さにして . . . 本文を読む