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新築か増築か2 ~地盤調査への素朴な疑問~

1)地盤調査との出会い

地盤調査という言葉を最初に耳にしたのは10年ほど前のことです。考えてみると耐震診断という言葉より先に知ったことになります。

今では地盤調査は新築工事の前に行うべき当たり前の調査となりました。地盤調査の普及に伴い地盤改良を行う会社で急成長を遂げたところも知っています。

ご存知の方も多いと思いますが、地盤調査で地盤沈下の可能性があると判定された場合、適切な地盤改良方法が提案されます。地盤改良の方法は多種多様で費用にも差があります。どの方法を採用するかについては、地盤の状態によって異なり、調査結果によっては建物本体費用の他に多額の出費を余儀なくされることも少なくありません。

2)地盤改良費用は施主にとって大きな負担

新築を検討されている方にとって、地盤改良費用は大きな負担になります。地盤改良の必要性がないと思っていた人ほどショックが大きいのではないでしょうか。中には、地盤調査の結果が良いものであることを祈るような気持ちで待っている方もいると思います。

運悪く(?)地盤改良の必要性ありと判定された場合、それでも地盤改良は実施しないと決断する方はほとんどいないでしょう。
たとえ、建物本体への予算を削ってもなんとかしなければと思うはずです。

3)実は2種類ある調査方法

地盤調査でもっとも有名な方法は、SS式(スウェーデン式サウンディング )と呼ばれるもので、費用も安いため、大半がこの方法で地盤の状態を調べると思います。しかし、最近では「表面波探査法」という別の方法も私は注目しています。

実は、私にとってこの二つはよく知る存在です。
なぜなら耐震精密診断における地盤判定で初期の頃はSS式を採用し、最近は表面波探査法を採用しているからです。

表面波探査法は、建物への動的耐震診断とセットで行うことが多く、動的耐震診断の導入に伴いSS式を採用しなくなりました。実際に地盤を微弱ですが振動させることで分析する方法は、確かにSS式とは異なります。

SS式の弱点は、あまり細かいことまで分からないという点にあります。簡易的な診断法といってもよいため、費用も安いかもしれないが得られる情報も少ないということになります。少ない情報からでは、人(会社)によって判定が異なる可能性があります。

SS式を耐震精密診断時に行っていた頃、割と地盤が悪いという結果がでました。もちろん、古い木造住宅が建っているため地盤改良はできません。ただ、地盤による不同沈下等は確認されませんでした。
このあたりからSS式とはなんだろうという疑問が私の中に生まれたことは確かです。

4)表面波探査法も賛否両論

一方で、表面波探査法に対して疑問をもつ方の意見を耳にしたこともあります。自動車がたくさん通行する付近の地盤では正確な判定ができないとかそんなものだったと思いますが、逆に自動車があまり通らないところや時間帯なら正確な判定ができるということにもなります。(それが本当かどうか分かりませんが)

調べると表面波探査法は、SS式にくらべて高いと一般的には思われているようですが、実際にそれぞれ専門の業者に費用を問い合わせると2~3万円程度しか違いがありませんでした。(SS式が3~4万円程度で表面波探査法が5~6万円)

5)診断結果が異なる場合

さきほど、差が2~3万円程度と書きました。
仮にSS式では地盤改良の必要性ありと判定され、地盤改良費が80万円かかると言われたが、表面波探査法では基礎をベタ基礎にすれば特に地盤改良の必要性が無いと判定されたとしたらみなさんはどうするでしょうか。

心情的には自分にとって都合の良い結果を採用したくなります。ただ、だからといって一方の悪い結果を無視するのも難しいでしょう。より安全性を求めて過剰かもしれないが地盤改良を決意する方もいるでしょうし、表面波探査法の結果を採用して何もしないとする方もいると思います。

可能性としては、設計者に意見を求めるかもしれません。となると設計者は建物だけでなく地盤についても十分な知識を求められることになります。

例えば表面波探査法の結果を採用し、不同沈下も無かった場合、地盤改良に支払うはずだった80万円の損失を防げるわけですから2~3万円高い表面波探査法は十分得な決断といえます。

6)私個人の考え方

表面波探査法の方が、SS式よりもあらゆる点で優れていることがはっきりすれば、最初からこちらで調査した方が確実だと思っています。まだ、このあたりについては調べている段階ですので、新築住宅の依頼があった場合は両方実施させていただいています。許可をいただければ実際にブログで比較結果を公開したいとさえ考えています。

考え方はひとそれぞれであると思いますし、建物より地盤をしっかりさせなければという意見は多くの方が賛同するでしょう。
ただ、仮に地盤改良したとしても地震の揺れを減らすことができるとは限りません。地盤改良の目的は不同沈下防止であって地震による被害軽減ではないと思われます。地盤保証の内容に地震発生における被害についての保証が記載されているか調べている最終ですが、おそらくないでしょう。

ネットで調べたら同じ地盤に対して、表面派探査では地盤改良実施率が30%に対して、SS式では70%という情報がありました。

これは正直驚きの数値です。
SS式は実施すればほぼ地盤改良しなさいという判定がでるわけで、やる前から結果はほぼ確定しているようなものです。もっと注目すべきは、同じ地盤を調査するという目的で行っているのに差が出てしまうことですね。

この情報の信憑性に対しても疑いをもつべきですし、SS式に不利となるような条件で比較している可能性もありますが、本当だとしたら怖いことです。

7)建築業としては地盤に余計なお金を負担させたくないのが本音

地盤改良の必要性や重要性はわかります。
ただ、もう少し冷静に本当に必要なことなのか、調査方法の精度というものに疑問をもつ必要性があると私は思うのです。

地盤改良に必要な費用は、方法や建物規模によっても異なりますが30~100万程度。そのお金を建物に使うことができれば、相当建物の仕様はよくなります。制振製品を取り付けてもよいかもしれません。

8)今後の方針

しばらくは、依頼者とよく相談し、2種類の診断を行いたいと思っています。また、地盤について詳しい方や会社をいくつか知っているので、調査結果から様々な意見を聞いた上で、依頼者に整理して説明し、自分の意見を伝えた後、決断していただくという形とします。

もしかしたら近い将来、表面波探査法だけとするかもしれませんが、慎重に判断する必要があると考えてます。


※表面波探査法については下記サイトが詳しいです。
http://www.vic-ltd.co.jp/
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