建築士伊藤の防災教育・耐震診断・耐震補強実績ブログ
建築士伊藤の耐震ファイルBlog
最近の仕事
かなり丁寧に図面を考えたこともあり、ご住職もかなり使いやすいようで高い評価を頂いた。
建物によって、それを利用する方の能力や効率がアップすれば、特に仕事で使う人ほど収益につながる。
単に過ごしやすいとか見た目がおしゃれということだけではなく、いかに仕事しやすいかを追求したいと常々思っている。
それにしても0から1を生み出す仕事はいわば苦痛の連続である。
ポンポンと生み出せる方もいるだろうが、やはり時間もかかるし、何かをきっかけとして生み出せることも多い。
妥協してこれくらいでいいかなという図面を提供することは経験を積めば積むほどできるのかもしれない。
でも頭の中にあるものを絞り出して絞り出して生み出したものではない。
もちろん、それだけ苦労して生み出したものが必ずしも評価されたり、仕事になるとは限らない。
そして、きちんと対価としてお金を頂きにくいところもある。
それは私自身に原因があるのだろうけど、0から1を生み出す仕事をいつまで続けられるのか、続けさせて頂けるのか、ふと考えることも増えた。
でもそういった苦痛の末、最後に依頼者から評価して頂ける瞬間があり、それゆえに続けられる人も多いのだろう。私もその一人。
先週、焼津市内のある工場の違反是正工事が完了し、消防署と焼津市役所からの現場検査も合格した。
焼津消防署曰く、焼津市・藤枝市内に消防法違反の建築物は数多く存在するらしい。
所有者が意図して違反したケースもあるだろうが、知らない内に違反していたこともある。
とはいえ、消防法違反は火事の際に人命にかかわることだし、知らなかったでは済まされないところがある。
一方で急に高額な消防設備を設置しなさいと言われても無い袖は振れない方もいる。
結局のらりくらり時間だけが経過するのだろうが、やり方によってはコストを抑えて適法とすることも可能な選択肢もあるかもしれない。
工事費は気を抜くとすぐに高額となる傾向がある。
既存建築への対応だとなおさらだろうが、設計段階でどこまでそれを抑えられるのかが重要になり、設計者によって工事費が100万も200万も異なる可能性もある。
前にも書いたが、設計者の支払いが100万だったとしてもその設計者の力量によって200万の工事費削減が可能なケースも当然あるわけで、その場合は決して設計者に100万支払うことは損ではない。
このあたりはなかなか可視化できないため、理解されにくいところもある。
工場の違反是正は、難易度としては高く、焼津市役所と消防署から合格通知を頂いた際は、正直安堵した。
最後の最後まで気を抜くことはできないが、依頼者だけでなく消防署からも高い評価を頂いたことは自信になった。
もう一つ、明日向かう予定だが、山梨県の富士川町にある日蓮宗のお寺から登録有形文化財に関する相談を頂き、対応することになっている。
由緒ある寺院であり、文化財に登録することで、今後様々な事業を検討されているようだ。
ご縁を頂き、大変光栄であるし、紹介して下さった地元工務店のためにもきちんと誠実な仕事を心がけたい。
お寺は①檀家寺 ②信者寺 ③観光寺 と運営方法が3つに分類されているとどこかで聞いたことがある。
もちろん①と②のどちらも積極的に運営しているところもあるだろうし、そんな分類は不本意と異を唱えるお寺もあるだろう。
各住職によって考え方、方針は異なるだろうし、地域性やお寺の歴史もあるから私も安易な発言はできない。
今回のお寺のように住職が明確な考え方をもっていて、そのために登録有形文化財としたいということであれば、私は出来るだけ一生懸命対応したいと思う。
まずは、明日の富士川町役場の担当者との協議に力を注ぎたい。
TOUKAI-0 今の耐震について思うこと
昭和56年(1981年)5月31日以前に着工した木造住宅は、今では築43年以上となった。
静岡県の耐震事業であるTOUKAI-0がスタートしたのが平成14年頃(2002年)。
事業開始から21年経過したことになる。
耐震診断や補強法については、2012年に改定があり、それ以降で大きな改訂はない。
様々な耐震補強製品が考案され、いつのまにか消えたものもある。
最近では昭和56年5月31日以前の木造住宅だけでなく、平成12年5月31日以前に着工された木造住宅も耐震補強の対象とすべきという声も耳にしたこともある。
(理由は平成12年6月1日以降に建築基準法の耐震基準大きく変わったから)
このあたりは、今後静岡県も対応を検討しているのだとは思う。
現在のTOUKAI-0における補助制度では、補強後の評点が1.0以上を支給条件としている。
補助申請の流れや支払い方法等、何より補助額がかなり変わった。
良くなったと思う。
一方で、対象としている住宅が築43年以上経過しているという点について、あまり考慮されていない気がしてならない。
構造計算の大前提は、構造体が健全であること。
新築の場合は、当然だがこれがクリアされている。
では古い木造住宅の場合はどうかといえば、実際に健全であるのかどうかを現地調査で把握するのは難しい。
一般診断法では劣化度という項目で評点を低減しているが、どこまでそれが機能しているのか分からない。
基礎が軽微なひび割れなのか、軽微ではないひび割れなのかでも評点は大きく変わるし、劣化度も変わる。
甘く診断すれば容易に1.0以上の耐震補強計画とすることは可能だろうし、厳しく診断すればどんなに補強しても1.0以上にはなかなか到達しないのが現実である。
加えて、1.0以上というのはあくまでも目安であって、個人的には耐震補強への補助金を支給する判断基準でしかないと思っている。
当然のことながら評点という数値にはダイレクトに反映されないが、確実に耐震性を向上させる工事も存在するだろうし、このあたりが担当する建築士の腕の見せ所ではないかと思えてならない。
例えば、1.0以上ではなく、2割増しの1.2以上となる補強計画でなければ安心はできないという基本姿勢で補強計画を立案する方がいたとしても決して間違いではない。
1割増しの1.1以上とし、補助対象の範囲内で補強する壁にひと手間かける方いてもそれも間違いではないと思っている。そのあたりの設計者判断は許されてもよいだろう。
ただし、補助の対象とならないと市に判断されたら大問題であるため、事前相談は必要とは思う。
ルールをきちんと守った上で、建築士としてどうすればより地震に対して有効な補強を提供できるのかを考えるのは悪いことではないと思う。
実際、私自身築年数が40年以上となった木造住宅に対して、いろいろ創意工夫しなければならないと思っているし、最近は計画時の評点は1.2以上となることを心がけている。
構造用合板による補強で制振テープの使用も検討しているのは、やはりそういった考えが元になっているからだ。
同じ評点1.0でも担当する建築士によって、補強計画は異なる可能性は高い。
もちろん所有者の要望もあるだろうが、補強をメインに依頼される方は、建築士としての技量を信頼して任せるわけで、明確に自分の所見と補強方針を伝える必要はある。
依頼者は、マニュアル通りの対応プラスアルファを求めているのではないだろうか。
予算のこともあり、どうしても建築士側が求める十分な補強が実現できない可能性がある。
このあたりもよく話し合う必要がある。1.0以上の補強ならどれも同じ、ということは決してない。
一区切り
3月はとにかく慌ただしい日が続きました。
一級建築士の定期講習を日建学院静岡にて21日受講であることを忘れ欠席。
今年度中に受講しなければならなかったので、慌てて別の会場を探したところERIアカデミーが大阪にて28日に講習を行っていることが分かり、即申込しました。
難しい工事の完了検査も29日に予定していたため、先週はあまり気持ちに余裕がありませんでした。
ただ、以前より落ち着いていろいろ対処できるようになったと思います。
やはり私は一級建築士の製図時代に恩師からたとえ1%でも成功する確率が上がるならその努力は惜しむなという言葉が好きですね。
工事にしても申請業務にしても1%でも成功する確率が上がるならやはり責任ある人間はそれを惜しんだら終わりだと思います。
工事中の事故もそうだと思います。
29日の完了検査も無事スムーズに終わりましたが、そういうことも当たり前ではあるんですが、当たり前にするためにそれ以前の仕事が重要になるわけでして、そのあたりも1%の積み重ね努力が重要と思います。
思えばこの工事もいろいろな方々から協力を頂きました。
今年度は一級建築士事務所としては飛躍的な年度だった気がします。
工務店として長く経営を続け、売上の大半はもちろん建築工事によるものですが、一級建築士事務所を開設してもうすぐ10年という節目が迫った頃に建築士事務所としての方向性と言いますか、スタイルが形になってきた感覚があります。
建築士事務所というのもいろいろなスタイルがあり、特に一級建築士事務所は出来ることが多岐にわたるのですが、その中で何を強みとしてやっていくのかという点を定めるのが難しいのです。
私の場合、高校時代に柔道をやっていた経験が影響しているかもしれません。
例えば、私は背が低かったので、背負い投げを恩師から教えてもらいました。
まずこれを徹底的に練習します。(当時は「させられた」という認識でした。)
背の高い仲間は内股という技でしたね。
技を繰り返す打ち込みという練習がありますが、背負い投げはとにかく運動量が多く、内股がうらやましく思えたものです。
内股も真面目にやれば背負い投げ以上に疲れるのかもしれませんが、当時の私にはうらやましくて仕方がなかった。
で、その背負い投げを活かすために今度は小内刈りという技を教えてもらいます。
背負い投げを警戒する相手に有効な技であり、上達すると一本もしっかり取れる技です。
で、この2つがある程度の域まで上達すると試合に出れるわけです。
正直この2つだけでもかなり上達していれば十分勝ち上がれるらしいのですが、高校生の私からすれば他の技も覚えたいという気持ちになるわけでして、あまり先生には良い顔をされませんでしたが巴投げなども教えてもらいました。
でも巴投げは捨て身技なので先生には試合で使用することは勧められませんでしたね。
それより寝技を練習して上達しなさいと言われた記憶があります。今思えば、本当に素晴らしい指導者から柔道を学べたと思っています。
このように一つの技(技術)を覚えたらその技術を活かせる技術を次に覚える方がよいという感覚が残り、今もそれはあります。
一級建築士事務所もその意味では工務店との相乗効果を狙ったものでした。
相変わらず建築業界に関しては難しいかじ取りが求められます。
少しでも油断するとあっという間に時代遅れ、お客様に求められない存在になります。
どうにかいろいろ毎日工夫して、乗り切りたいと思っています。
最近の仕事
お客様と二人三脚で進めてきたので感慨深いものがあります。
昨年ご相談頂いた工場の改修(設計・監理のみ)についても別工務店の工事費がまとまり、お客様に見積を提出できるようになりました。
長い時間をかけ、出来るだけコストを下げられるように何度も内容を検討しました。
コストダウンは設計の初期段階から注意しないと上手くいきません。
当然のことなのですが、この当然のことができていなくて、設計が終わってから各関係業者に見積金額を下げてもらうようにお願いするケースも意外と多いのです。
やはりこのぐらいの工事ならこのぐらいの金額がかかりそうだというイメージできるようになるにはそれ相応の経験が必要なのだなと思います。
ただ、設計者の功績というのは意外と理解されないものでして、例えばAとBの建築士事務所があり、Aの方が設計料が高くても提案する工事計画はBよりも安い工事費となることもあるでしょう。
もし工事のコストダウンより設計料の差額の方が安ければ、トータルで考えた場合、Aに依頼した方が安くなるわけです。
簡単に説明すると以下のような感じです。
A建築士事務所 設計・監理 500万
工事費 2000万
B建築士事務所 設計・監理 300万
工事費 2500万
ただ、上記のような比較は現実では難しいため、どうしてもA建築士事務所の費用が目立つわけです。
このあたり、やはり建築士事務所の役割とかメリットというのをもう少し理解してもらうように努める必要が建築士側にあるのかなと思います。
あとは、工事後に何かあった場合の補償ですね。
これを意外と知らないお客様も多いようで、新築した工場で天井から水が漏れ、保管した材料にも被害があった場合、それを補償する能力が建築士事務所や施工業者にあるのかどうかという確認は必須です。
補償する気持ちがあっても能力やお金がなければそのまま放置となります。
万が一に対する備えの有無についてもきちんと説明して、他との差をアピールすることも重要な気がしています。
ようするに建築士側が一生懸命丁寧に説明し、仕事ぶりで理解してもらうしかないと思っています。
後は事務所の改装に関するご相談やお寺の本堂改修、山門の新築などのご相談を頂いています。
ひとつひとつに時間をかけてしまい、お待たせすることが多いのですが、片手間の仕事はできませんし、ひとつひとつ丁寧に対応するしかないのですが、もう少し要領よく仕事ができないものかなぁと思っています。
オーダーキッチン天板
天板はステンレス。
完全オーダーメイドではないが、かなり自由度が高く、シンクの位置やコンロの位置も自由に設定できる。
(シンクのサイズは種類があり、その中から選択)
正直メーカーのシステムキッチンは本当に安いのか、という疑問はある。
現在のキッチンメーカーのショールームは広くてきらびやかだ。
スタッフの応対もしっかりしているし、人数も多い。
もちろんそれを維持するための経費はキッチンに含まれている。
多分原価は恐ろしいほど安いのかもしれない。
正直、ものすごい安いシステムキッチンならばメーカーの方が安いような気もする。
ただ、こだわるようになったり、豪華さを求めるとびっくりするような金額になる。
このあたり、必ずしもオーダーキッチンが良いとは言えないのだが、年々新築住宅における設備(キッチン・バス・洗面)の費用割合は大きくなっている気がする。
私自身、お客様がショールーム見学する際は同席するわけだが、複雑な心境になることも稀にある。
これからどんどん材料だけでなく人件費も人手不足で高騰するだろう。
建築工事も分業化されることによって、いろいろなメリットが生まれたとは思うが、正直にいうとこれからの時代は分業化されすぎるのも問題な気がしている。
それにしてもオーダーキッチンは面白い。
正直私の仕事は増える。
増えるが、それでもやりがいの方が勝るし、苦になるほどの差はない。
もう少し肩の力を落として、このくらいのキッチンで良いのだといった感覚や住みながらキッチンを自分でカスタマイズすればよいという方もいると思う。
そういう選択肢がありますよということを提示することは良いことだと思えてならない。
お客様も楽しみにしてくださっているし、しばらくはこの造作キッチンの図面を行うことになるだろうが、正直こういう機会を頂いて良かったなと思う。
図面を書く
この漫画に登場する日高先生が大変インパクトがあり、どこか私が日建学院でお世話になった製図の先生に似ているところがある。
漫画家は漫画を描くのが職業である。
建築士は図面を書くのが主な仕事である。
この漫画でも度々登場する漫画や絵が描けないというエピソードだが、妙に共感できるところがある。
ようするに私も図面がなかなか書けないときがあるからだ。
作業が止まり、思うように仕事が進まない。
焦りだけが積み重なり、どうにもならなくなる。
でも結局のところ1本でも線を書くしかない。
とにかく書いていれば前に進むのだから自分自身に書け!書け!と言い聞かせるしかない。
立ち止まっているより、少しでも作業を前に進めた方が気持ちも落ち着くのだから。
だからこの漫画で日高先生が生徒にひたすら「とにかく描け!」と言い続ける場面に心を打たれる。
辛いときだろうがなんだろうが、もう50歳目前にもなると背負うものも多く、期待されることも多々ある。
不安がときには頭をよぎることもあるし、過去の経験からなんとかなるだろうと楽観的に考える術も身につく。
でも結局のところ建築を仕事とし、建築士としての役割を果たすのであれば、どんなときでも自分自身を鼓舞して書け!書け!と言い続けるしかない。
そうやって苦しい中でも生み出した自分の図面がやがて形となり、それがお客様に喜んで頂けるのは本当にうれしいことだし、産みの苦しみは良いものが出来上がるために必要なものであるような気もしている。
あけましておめでとうございます。
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。
新年早々、石川地震やJAL機と海保機の衝突事故など暗いニュースが世間を騒がせています。
石川地震ですが、耐震補強を行った木造住宅の被害の有無が気になります。
私も随分と長く、TOUKAI-0事業に関わっていますが、耐震補強が地震に対して具体的にどような効果があるのかということを今一度きちんと知りたいと思うようになりました。
耐震補強工事は試行錯誤の時代からいかに定められたルールに従い補強しているかを重視する時代へと移行しました。
長い年月をかけて耐震補強に関する情報が蓄積化され、それに関わる方も増えたことで、マニュアル化も充実し、補助金の審査を行う側の経験や能力も向上しました。
初期のころに目立った手探りや試行錯誤の必要性が減ったと思っています。
もちろん全く無いとは言いません。随分と減ったということです。
この時期に石川地震が発生したことによる影響はかなりあると思っています。
今後の経過を建築士として注視しなければなりません。
次に私自身についてです。
昨年秋ごろから着工した新築住宅については、引き続き丁寧な対応を心がけたいと思います。
そして今年は、建築士事務所としての仕事も増えてきました。
今年は建築士事務所としての業務と工務店としての業務のバランスに配慮し、会社としての成果目標をきちんと定め、その目標を達成するよう日々注意したいと思っています。
そういった意味で一番気を付けるべきは、自身の体調ではないでしょうか。
昨年はインフルエンザで体調を崩した時期もあり、大変苦労しました。
頑張るのは良いが、体調を崩してまで無理をするのは褒められたことではありません。
まずはとにかく体調管理を気をつける。
それを第一優先にしつつ、さきほどの会社としての目標をきちんと定め、達成したいと思っています。
庫裏新築工事
今月中旬にいよいよ牧之原市にあるお寺様の庫裏新築工事の建方を行う。
基本設計に時間をかけ、随分もお客様を待たせてしまった。
8月お盆前から建築確認申請やプレカット図の検討などに没頭し、正直に言えば焦りと緊張の日々だった。
庫裏は住宅ではない。
建築基準法的には住宅なのだろうが、単純に住宅というカテゴリーに当てはめてよいものではないと思っている。
本堂の隣に普通の住宅を建てればよいと思う方もいるかもしれないが、私はそうは思わない。
一般住宅のノウハウを活かせる場面もあれば、活かせない場面もあると思うし、隣接する建物との関係性も無視できない。
今回の庫裏設計は私自身のこれまでの経験や知識の全てが反映されている。
集大成のようなものであるからこそ、正直に言えば怖かった。
その建物自体が私自身を投影しているように思えてならなかったから。
一方でお客様が図面をとても気に入って下さり、この家に住みたいと言ってくれた。
それだけでもやはり誇らしい気持ちになる。
建方までの準備はまだまだ続く。
緊張感をもって臨む覚悟。
車いす用昇降機
三島市のお寺にて、車いす昇降機を設置しました。
高低差が1.5m程度あり、玄関ホール内に設置する等の条件が重なり、難易度が高い工事です。
何社か検討し、シンテックスという会社のタスカルリフトを採用しました。
代理店は新光産業という会社です。
横浜にあるショールームにも足を運び実物を確認。施工上の注意点などもきちんと把握するよう努めました。
代理店の担当が熱心で随分と助けられました。
上階にはドアがついています。
これは電子制御されていて、昇降機が上階になければ解錠されません。
逆にドアをきちんと閉めないと昇降機は下階に向かうことができない仕組みとなっています。
これは例えば昇降機が下階にある状態でドアが開くと落とし穴のような形になり、上階にいる方が1.5m下の地面に落ちることになります。
エレベーターが必ず乗り降りする階に到着しなければ開かないのと同じ仕組みです。
昇降機設置は1日で終わりました。
ただ、設置前の工事や段取りがとても重要で、玄関床(御影石)を一部撤去してピットと呼ばれる空堀を設置したり、ドアを新設するといった作業については、神経質なぐらい慎重に作業を進めました。なにしろ昇降機とドアの位置がずれていたら上階に車いすの方が向かうことができません。
墨出しが一番重要だったと思っています。
ご住職様から予想以上にスッキリ納まったと高い評価を頂き、やはり細部まで熱心に検討することの重要性を感じました
1m以上の高低差となるとスロープでは限界があります。
昇降機はそれほど複雑な構造ではなく、むしろシンプルです。
屋外より屋内の方がおそらく故障が少ないと思いますので、今回のお寺様のように上手く建物内に昇降機を納めることができれば、メンテナンスもそれほど負担にならないのではないかと思っています。
遵法性調査(じゅんぽうせいちょうさ)
前回の続き。
放課後等デイサービスや就労継続支援等の開業を検討されている方から候補となっている物件の遵法性を調査してもらいたいという相談が増えてきた。
これらは建築基準法における用途としては「児童福祉施設等」に該当する。
特殊建築物に分類され、不特定多数の方々が出入りする施設であるため、厳しい制限を受けることになる。
例えば、事務所として建てれらた物件で放課後等デイサービスを開業したい場合、事務所ではOKだった制限がNGとなることは多々ある。
用途変更の手続きは200㎡以下なら不要だから気にしなくてもいいと平然とアドバイスする方もいるようだが、単に手続き不要なだけであって、法を無視して良いわけではない。
そもそも「児童福祉施設等」ということは、支援を必要とする社会的弱者が利用する施設であるということを開業者は肝に銘じておく必要がある。
採光が十分ではない室で過ごさせたり、火災等で避難が困難な建物で開業を強行するような事業者が、満足なサービスを提供できるとは思えない。
もちろん、高い志や理念を掲げて開業しようと努力されている方も多いと思う。
ただ、そういう方々も建築に関する知識不足が原因で借りてしまった後とか買ってしまった後に開業できないことに気がつくケースもある。
不動産業者を名指しで非難するつもりはないが、やはり不動産業者に任せきりにしないで借り手側・買う側が慎重に調査や検討した上で契約を決断すべきだと思う。
専門家である建築士に相談するのも手ではあるが、どうしても費用は発生してしまう。
またその費用を出来るだけ抑えたいということであれば、せめて仲介する不動産業者に対して、建築確認や完了検査の有無は確認すべきだろう。
私も最近までは知らなかったがこのような建築士の調査業務を遵法性調査(じゅんぽうせいちょうさ)というらしい。
実はこれはかなり難易度の高い業務だと思っている。
まず、法知識が必要であるし、過去に様々な申請業務の経験も必要になる。
開業を考えている方は、なによりスピードを重視されていると思うので、なるべく早く遵法性の有無を報告してもらいたいだろうからある程度のスピードも求められる。
最近はありがたいことに現地に足を運ばなくてもある程度、ネット上で建物の外観も分かるため、おおよその検討はつくことも多い。
今後はこういった調査も増えるのではないかと思っている。
相談者や行政書士の中には、確認申請(用途変更手続き)が不要になったからといって、建築基準法および関連法令を守らなくても良いと曲解する方もいる。
確認申請の手続きが不要になっても法律遵守は義務となるため、「採光」「換気」「排煙」等の検討が不要になったわけでもない。
用途変更が不要だから窓なんて小さくて暗い部屋でも構わないと考える方に対して、きちんとその考え方は間違っていると伝える人がもっと必要だと思う。
何度も書くが放課後等デイも就労支援も社会的弱者のための施設である。
なんども書くが、用途変更の手続き有無を自己の都合の良いように曲解しないようにしてもらいたい。
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