名護市辺野古の新基地建設を巡り、翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消してから13日で1年を迎える。埋め立て工事の法的根拠を失った国は、知事の取り消しの効力を停止したり、代執行訴訟を提起するなど新基地建設に向け強権的な姿勢を示してきたが、工事は進んでいない。知事は、あらゆる手法で新基地建設を阻止する姿勢を堅持しており、辺野古移設計画の先行きは見通せない。

工事、大幅に遅れ

 名護市辺野古の新基地建設を巡る翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しで、国は新基地建設を進める法的根拠を失った。国は知事の取り消しを不服として執行停止や代執行訴訟などで工事再開への道を探ってきたが、ことし3月の和解合意を受け全工事の中断に追い込まれた。国が当初描いていたスケジュールは大幅に遅れている。

 日米が合意した統合計画では、全体の工期を9・5年と設定。そのうち、埋め立て工事は5年で、当初計画では20年10月31日には工事を完了する予定としていた。

 沖縄防衛局は14年7月にキャンプ・シュワブ内の滑走路に位置する工場や兵舎などの解体工事に着手したが、台風や県知事選など政治的な思惑も絡み工事は複数回中断。知事の承認取り消しに対し、防衛局は執行停止を申し立て、同じ政府機関である国土交通相が知事の取り消しの効力を止める判断を下した。

 一方、ことし3月4日に代執行訴訟で県と国が和解合意し、和解条項に従い国は全作業を停止。結局、護岸工事には着手できていない。

 防衛局は、シュワブ陸上部の工事に早期に着手する考えだ。県内部では当初、陸上部の工事を認めれば辺野古の本体、関連工事にも着手し、歯止めがきかなくなるのではとの懸念があったが、9月1日の作業部会で「埋め立て工事とは関係がないことが確認できた」として認める考えを示した。だが、防衛局はまだ着手できていない。

 国が法律に基づき埋め立て工事が可能になるのは最高裁で勝訴し、翁長知事が埋め立て承認取り消しを撤回した後だ。最高裁判決が見通せないことに加え、県は知事権限など「あらゆる手法」で建設を阻止する考え。工事の大幅な遅れに米側の懸念や日本政府への疑念が高まる可能性もある。