翁長雄志知事や支持勢力の主張する「辺野古新基地反対」と「オスプレイ配備撤回」は在沖海兵隊の部分的な議論にとどまる。沖縄の過重負担を解決するには「海兵隊撤退の要求に踏み込むべきだ」という声が根強く残る。(特別報道チーム・福元大輔)

 日本政府は辺野古新基地の必要性について、北朝鮮や中国といった潜在的紛争地域と沖縄との距離的な関係のほか、沖縄に多様な施設、訓練場がまとまっていることで海兵隊の機動力、即応力を維持していると強調してきた。

 特に、在日米軍再編後も沖縄に残る第31海兵遠征部隊(31MEU)の陸上と航空の部隊が実践的、総合的な合同訓練を実施することが不可欠で、普天間飛行場の機能だけを県外、国外に切り離すことは困難と訴えている。

 SACO最終報告も、海兵隊の施設・区域を対象に、県内に点在する基地機能を人口の少ない北部地域に集約。冷戦後の世界戦略とオスプレイなどの新装備に対応した施設に更新することに主眼を置く。整理・縮小といっても司令部、陸上、航空、後方支援の4要素を自己完結する機能「MAGTF(マグタフ)」を県内で確保できる内容だ。

 辺野古新基地はオスプレイの拠点となる。北部訓練場の新たなヘリパッドは上陸する歩兵部隊を、空から支援するオスプレイや攻撃ヘリが使用する。鶏が先か、卵が先か、のように、部隊の拠点があるから訓練場が必要で、訓練場があるから拠点が必要という循環論法の関係が県内で成り立っている。

 つまり、普天間のような一部の機能ではなく、在沖海兵隊全体の県外移設を模索する方が軍事的合理性が高く、辺野古新基地建設に反対するなら、県内の基地機能強化につながるSACO最終報告に反対する方が整合性が保たれる。

 県内には、海兵隊以外にも、かなりの面積の米軍基地がある。例えば空軍嘉手納基地(1985ヘクタール)と、嘉手納弾薬庫(2685ヘクタール)の面積は計4670ヘクタールで、在日米軍の主要施設である三沢(1596ヘクタール)、横田(713ヘクタール)、厚木(506ヘクタール)、横須賀(236ヘクタール)、岩国(791ヘクタール)、佐世保(461ヘクタール)の6施設計4303ヘクタールを上回る。

 海兵隊は在沖米軍の兵力の6割、面積の7割を占め、県内からの撤退が実現すれば大幅な負担軽減になるが、沖縄が日米安保の負担をすべて放棄するわけではなく、非現実的な要求ではない