新型コロナウイルスの感染拡大が暴力団の「しのぎ」(資金獲得活動)に思わぬ打撃を与えている。東京都内では複数の飲食店などが売り上げ減少を理由に、みかじめ料の支払いをやめた。店舗経営者の男性(57)もその一人で、経験から警察に相談することの重要性を訴える。ただ完全に関係を断ち切るのは難しく、識者は警察による支援が必要だと指摘する。(1面参照)

 「しめ飾りを買ってもらえないか」。5、6年前の12月のある夜、男性の店舗に男2人が突然訪れた。「必要ない」と断ると「そんなこと言っていいんですか」と詰め寄られた。穏やかな口調だったが、男たちの目つきは鋭かった。

 面倒なことになるくらいなら…と毎年1万円を払い続けた。だが、昨年4月に初の緊急事態宣言が発令されて以降、店の売り上げは減少傾向に。前年に比べて数十万円減った月もあり、懐事情が途端に厳しくなった。

 そんな中、巡回の警察官からみかじめ料を払わないよう説得された。意を決し、2人のうちの1人が昨年12月に来訪した際、「警察が来ている。やめた方がいい」と言うとすんなり引き下がった。男性の申し出を受けた警視庁は男が暴力団組員と確認。男には暴力団対策法に基づき今年3月、同様の行為を禁止する再発防止命令が出された。

 警視庁組織犯罪対策3課によると、コロナ禍の売り上げ減を理由として、昨年末までに20超の飲食店などがみかじめ料の支払いをやめた。都内の一部地域を対象とした店舗訪問などで判明した。支払いを断る店舗も出てきた一方で、木村晋也課長は「依然として組員によるしのぎは活発だ」と警鐘を鳴らす。

 苦境にあえぐ店は全国的にも多いとみられ、「払っている店は警察に相談を」と男性。暴力団を取り巻く状況に詳しい大阪大の鎌田拓馬准教授(犯罪社会学)は「みかじめ料の支払いをやめたい人に警察が働き掛けてバックアップすることが重要だ」と話した。

(写図説明)取材に応じる店舗経営者の男性=4月、東京都内

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