シリア北部で、千葉市の湯川遥菜(はるな)さん(42)とみられる男性が拘束された。紛争地入りは、設立したばかりの民間軍事会社の実績づくりのため、と周囲に話していた。インターネット上には、自ら銃を構える写真も。現地に詳しいジャーナリストらは、スパイに間違えられた可能性を指摘する。

 映像通信会社「インデペンデント・プレス」のジャーナリスト、後藤健二さん(46)は4月、シリア取材中に湯川さんと知り合った。北部の街で、反体制組織「自由シリア軍(FSA)」拠点の屋内にとどめ置かれ、入国目的などの事情を聴かれていた。FSAの部隊と交流があった後藤さんは、湯川さんの通訳を頼まれた。現地の言葉だけでなく英語力も不十分だったという。

 シリアに来た理由について、「設立した民間軍事会社は出来たばかりで実績がない。経験を積むためには現場を見なくてはダメだと思って一人で来た」と話した。湯川さんは部隊側に、民間軍事会社と書いた名刺を渡していた。「紛争地で軍事会社を名乗るなんてあり得ない。敵方の手先と誤解されていた」と話す。危うく感じた後藤さんは部隊のリーダーに、「ここは危険だ。彼はジャーナリストなどの戦地に通じたプロではない。国外に出してほしい」と求めたが聞き入れられず、部隊はその後、湯川さんにシリアの状況を案内して回った。

 帰国後も東京都内で会った。湯川さんは「『いつ来るんだ?』と部隊のメンバーからメールが来る。こんなに必要とされている。シリアに行かなければ」と熱っぽく語っていたという。後藤さんは「友人が困っているから行くんだと言われて、強くはとめられなかった」と悔やんだ。

 湯川さんが民間軍事会社「ピーエムシー」を設立したのは今年1月。サイトでは、外国の治安不安定地域での情報収集や物資輸送・警護などを主な業務と説明する。だが、湯川さんの活動に協力する水戸市の元茨城県議、木本信男さん(70)によると、大手海運会社から「経験不足」と言われるなど、営業に苦戦していた。

 春のシリア訪問後、「危なすぎて生活できる所ではない」と言いつつ、「何回も行かなければ」とも語っていた。7月に電話で話したときは、「いくつか仕事が入っている。ここが頑張りどころ」と語っていた。

 シリア出発前の7月、千葉市花見川区の実家に数年ぶりに顔を出した。父の正一さん(74)には「外国に行ってくる」とだけ説明したという。「静かな優しい人間。無事をただ祈るばかりです」と話した。

■なぜ拘束されたのか

 内戦が長期化するシリア情勢だけでなく、米軍による空爆が続くイラク情勢が緊迫したことで、湯川さんは欧米のスパイと疑われた可能性がある。

 イスラム過激派系のツイッターサイト「ジハード(聖戦)ニュース」は「スパイ」と決めつけた。湯川さんは拘束された際に「カメラマンだ」などと答えたが、ジハードニュースは、湯川さんの会社のサイトを引用する形で「カメラマンではなく、戦闘計画立案などをする日本の『民間軍事会社』の社長である」と強調した。

 「イスラム国」が勢力を強めたイラク北部では8日以来、米軍の空爆が続く。イスラム関連サイトには、米国への激しい敵意の言葉や、「イスラム国」を支援する組織への制裁を警告した15日の国連安全保障理事会決議への反発が書き込まれている。

 「イスラム国」には欧米やアジアなどから戦闘員が加わっており、欧米人や日本人であることを理由に敵視する傾向は小さいとみられるが、欧米の情報機関の工作員が潜入することを警戒。スパイを示す「裏切り」の罪で、自らの戦闘員を処刑した例も公表している。

 湯川さんはシリア北部のアレッポ郊外で、FSAに同行していたとされる。「イスラム国」はFSAと戦闘状態にあり、スパイだと疑われたとみられる。

■「銃持っていたら自殺行為」

 現地で活動するフリージャーナリストたちは「戦闘地域では銃を持たないことが基本だ」と強調する。

 湯川さんは7月、シリア北部のアレッポで自動小銃を試し撃ちする動画をインターネット上に投稿。拘束時の動画でも「なぜ銃を持っているのか」「兵を殺したのか」と尋問されており、銃を持っていた可能性がある。

 1月に現地で取材をした玉本英子さん(47)は「もし銃を持っていたのであれば自殺行為ではないか」と語る。シリアの戦闘地域は、ほぼ無政府状態。「銃を持っているだけで戦闘員とみなされ、標的になる。写真家や記者だと抗弁しても信用されない」と言う。

 アレッポで3度の取材経験がある西谷文和さん(53)は「(湯川さんは)写真家を名乗ったが、名前をネットで調べると民間軍事会社社長であるとわかる。スパイと見られる条件がそろっており、極めて不利だ」と語った。

 反体制組織「自由シリア軍(FSA)」の戦闘員だったアブ・タメさん(22)は6月、朝日新聞の取材に「荷物運びをしながらFSAと行動を共にする日本人がいるとFSAの知人から聞いている。外国人は拘束されやすく心配だ」と話した。

 

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【おまけ】

 

日本政府は話し合いで人質を解放させようとしてる(実質出来る事はそれしかない)のに、今まで「話し合いで戦争は防げる」とぶってきた人が「とっとと金を払え!」とわめいてるのはなかなかに興味深い。