「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

災害ボランティアによる静岡図上訓練を終えて

2015-03-08 21:26:45 | 防災ボランティア
10回目を迎えた災害ボランティアによる静岡図上訓練。

プログラムは大変良く練られたものだと、掛け値なしに思う。
7回の会合を重ね、プログラムと、分厚い「虎の巻(図上訓練スタッフマニュアル)」をまとめあげた、
ワーキンググループには心から敬意を表したいと思う。

キーワードは「困りごと」。
被災者が抱える困りごととはどういうものか。
その点を探ることからワークは始まる。

被災者の立場から「困りごと」を探ろうというのが初日のワーク。
名古屋の「レスキューストックヤード」のUさんが
「避難生活の実態について」というテーマで、話題提供をして下さった。
もちろん「困りごと」とは何かを考えてもらうための、いわば「頭の準備体操」。

困りごとを具体的にイメージするための「呼び水」も用意されている。
漠然とした「被災者」という言葉ではなく、
〔生活行為〕〔状況〕といった項目が書かれたA0版の紙が用意されており、
〔生活行為〕には、「食事」「居住空間(プライベートな空間・着替え・選択などを含む)」
「トイレ」「生活情報(物資の配給、仮設住宅の抽選情報、法律相談など生活全般に関わる情報のこと)」が、
〔状況〕には「失業/経済困窮」「家族が亡くなった」「家が倒壊」「持病を抱えている」が、
例として示されている。

それらを「深堀り」していくことで、「被災者」という一言ではくくることの出来ない、
より個別・具体的な「困りごと」へ迫ろう、というもの。

2日目のワークは支援者の立場から「困りごと」をどうしようか、というもの。
3人の支援経験談や現在取り組み中の活動概要が話題として提供された後、
前日に描き出された「困りごと」には誰がどう対応できるのか、考えてみようというもの。

実のところ、この段階になると、参加者のレベル差が如実に表れる。
具体的で現実的な検討をできる参加者・グループがいる反面、
一般的過ぎて具体的な検討とは言い難い参加者・グループも出てくる。
だが、そのレベル差は、現時点ではさほど本質的ではあるまい。

被災者の「困りごと」にしっかり向き合ったか。
一般論として、また漠然とした「被災地」「被災者」ではなく、
一歩進んでその「困りごと」またその背景に何があるかまで考えられたか。

また、そのような被災者の「困りごとをすくい取る網」を持っているかどうか。
言葉を換えれば、支援の手を差し伸べるために被災地域内に赴く際に求められる「着眼点」はあるか。
どのような「着眼点」を持っていれば、被災者・被災地の困りごとを、よりうまくすくい取れるか。
支援者に、また、被災者・被災地と外部支援者とを結びつける役割を果たすべき者に、
この種の「網の目」「着眼点」は必要不可欠のもの。

そのような「気付き」を得る場として、大変良いプログラムが用意されていた、と思う。

とすれば、問われるのはその横展開。
この通りにやろうとしても、なかなか難しいかもしれないが、
少なくても、富士市と沼津市では、このパターンで仕掛けてみたいと思うし、多分やれると思う。

今回の図上訓練中、次回の沼津市での防災ボランティア・コーディネーター養成講座の依頼があり、日程も決まった。
「旅の坊主」、静岡県内においては地侍である。
しっかり地域に向き合い、しっかりと伝えるべきものは伝えなくては、であった。

そんなことを考えさせられた2日間だった。
「旅の坊主」、まだまだやるべきことは多い!


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