治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

ケーキ屋さんになりたいです

2013-12-15 09:08:44 | 日記
長沼先生の本を作った時にわかったこと。
私の脳みそのどこが優れているかっていうと
実は無意識が賢い人だったんだ私。

それが「悪運」とか「動物的なカン」みたいに見えてたんだな。
そして今でもアンチから見ると「ずるいことして利益を上げてる」みたいに見えるんだな。
一生思っていたまへ。私は基本的に善意の人だ、そして善意を実益に変換できるのが商売人の醍醐味なんである。

さて、昨日も無意識が賢かったようだ。

昨日の講演はジレンマであった。
社会福祉協議会がやる無料の講演。こういうのって会場埋まる。
申し込み不要の先着順。
第一部が自閉症協会の人。
第二部がいつもついーと読んでいていいこというなあ、と思っているアスペルガー医師のロンさん。

第一部は聞きたくないけど、行かないと入れないかもしれない。

なんとなくリラクタントな気分だったせいか、家を出る時点ですでに遅刻必至でした。
十五分くらい遅れる感じ。

そして会場最寄り駅まできて、地図の読めない私が実にわかりにくい地図を見ながら、迷いながら会場(と思い込んでいた場所)に着いたのでした。
休館。

へ?

あわてて案内を見直しました。
場所間違えてた。
同じ最寄り駅の、別の場所だった。
こういう間違い、あまりしない人です私。
よほど自閉症協会のギョーカイトークがいやだったみたいですね。

すでに講演始まって数十分経ってます。
入れないかもなあ。

でもロンさんのお話聞きたいなあ。

だめもとで行ってみるか、と
また地図の読めない私が人に道を聞きながら(代替能力です)会場にたどりつきました。
受付で資料をいただくと、かなり席が埋まっているから二階席に行って下さいとのこと。
ここも立ち見が出てましたが、よく見ると荷物に席置いてる人もいるし。
席を空けてもらったころには、自閉症協会の人の話はほぼ終わりかけていました。
すごいな私のギョーカイよけセンサー。かなり高性能。
それでも青い東京タワーらしき映像はちらっと見ちゃったし、憲法改正反対みたいなトークも聞いて
相変わらずプロ市民活動してるんだなあギョーカイ、と思いましたが。

そしてロンさんのお話。
いつもついーとで見ているような正論が多かったけど、本当にあっというまに時間が経って
もっともっと突っ込んで聞きたいなあと思いました。
面白かったのは非言語コミュニケーションの割合の高さ。
ここが読めないからASDの人はいろいろうまくいかないっていうこと。
そうか、これも賢い無意識だけど
私はコミュニケーションっていうのは言語以前に始まるもんだっていうのはずっと前から思っていて、だからこそ森嶋さんの実践を見たときに、「これはコミュニーション能力を伸ばす!」って思ったんだよなあと思いました。

あと「ルール」というものに対するロンさんのひもときかた。
これは実に面白かった。
参考になりました。

それから20分の休憩をはさんで質疑応答。

これも全然時間足りなかったけど
「当事者も努力するのが平等な社会の実現を近づける」というロンさんに激しく同意。
えっと、今度裁判の話も聞きたいという函館の方々は、私が「自閉症者を対等の人間と見ているからこそ裁判を起こした」ことをわかってくださってるわけですが
平等だからこそ、努力が必要な存在なんですよね、ASDの人たち。
そして努力できる存在なんですよね、ASDの人たち。

同じ質問に対するギョーカイ人のお答えは「はいはいギョーカイギョーカイ」で
私は昨年の自閉症協会全国大会で発表された就労支援方針に感じた激しい違和感を思い出しました。
それと唐突ですが、私がかつて感じた
「キャラバン親の子は発達しない」ということを思い出しました。
そして自分が書いたこの記事を思い出しました。

人間誰しもエネルギーに限りがあるから
発達援助よりキャラバンにエネルギーを注ぐ人はそれだけそっちに価値があると思っているんでしょう。
逆に言うと本人に関するのびしろの見積もりが小さいわけですね。

そしてその人たちが目指す社会って
子どもが「ケーキ屋さんになりたいな」みたいなことを言うくらい現実感のない感じ。
子どもはケーキが好きだから、ケーキがいっぱいあって、きっといっぱい食べられるケーキ屋さんになりたいわけですが
実際のケーキ屋さんは仕入れコストとか、売れ残りの廃棄とか、人件費とか、そういうものに悩んでいるはずです。
ここでイチゴのデコレーションをしたら見栄えも味もいいけど原価が上がって値段に転換したら売れないんじゃないかとか、そういうことに頭めぐらす商売のはず。

そういうところが見えなくて、他人はおいしい思いをしていると思い込み、いろいろ社会に要求する。
それを「活動」にする。
だとしたら、社会適応できない当事者がいっぱい出てくるのは当然です。

そんなわけで、すごく同意した講演と、相変わらず同意しないギョーカイトークの両方を聞いて家路につきました。
ロンさんのお話は、皆さん聞いたほうがいいと思うし、これから発達凸凹の脳みそでたくましく社会に生きて行く子どもたちに聞かせたいようなお話でした。だから皆さん、積極的に講演企画されるといいと思いますよ。
ただ医師ということでもあり、猿烏賊ちっくな人からの反発は1万パーセントありますが。
そういうの、もういい加減無視しましょうよ。頑張れる人の権利も守りましょう。



さて、1月13日の「新春ワクワクセラピー」
これまでお申し込みいただいた方には全員ご参加ご案内のお返事を出しています。71名のご参加です。
これ以上人数が増やせるかどうかは
12月21日の愛甲さんの講演の時に自分で現場を見て確かめてこようと思いますので
(たぶんあと数名は増やせると思います)
一応ご希望があれば送っておいてください。厳正なる先着順でウェイティングのリストにしていきます。

昨日のお話を聞いて、ますます
コミュニケーション力養成に関して、言葉以外の部分が大事なのを確信しました。
だから森嶋さんの実践は、とても貴重です。
ある意味感覚統合より手軽なのは
大型遊具がいらないから、なんとかセンターとかなんとか研究室とかに赴かなくてもそのへんでやれることです。
ていうか実際当日私がお持ちする道具はすべて私の私物です。通販で今日頼めば明日届くものばかりです。
どうぞお楽しみに。