2025年の大阪・関西万博の建設現場で「メタンガス」の爆発事故が発生したことを受けて、万博協会は24日、爆発が起きたエリアでの換気設備の設置や、ガス濃度の測定値をホームページで公表するなどの開催期間中の安全対策を発表しました。
24日午後2時から会見を開いた万博協会の担当者は「基本的には、発表した対策はかなりレベルの高い、フルスペックのもの。基本的には(爆発事故など)そういう事態にならないだろうと想定しているが、万が一、『濃度測定』により基準値を超えた場合は、入場制限を行って追加の換気対策などを行う形になる」と語りました。
■溶接現場で火花が引火 新たに換気設備を設置
万博会場では3月28日、トイレの建設現場で溶接作業中の火花が可燃性のガスに引火して爆発。コンクリートの床が約100平方メートルにわたって壊れる事故が発生しました。会場の夢洲は元々、産業廃棄物の処分場で、地下にはメタンガスなどの可燃性ガスが溜まっていて、万博協会は工事前にガス濃度の測定を行わなかったことが事故の原因だと発表し、4月22日に工事を再開していました。
ところが、5月下旬になって、損傷は床だけでなく屋根材などにも及んでいたことが判明。工区を担当する業者は損傷を把握していたにもかかわらず、約2か月間、協会側に報告していなかったということです。
万博協会が24日にまとめた安全対策では、便器や配管の周囲にシールを設置し、隙間を埋めてガスの侵入を防ぐほか、新たに換気設備や穴の開いたマンホールなどを設置するということです。
■パビリオンが集積する地区でも検出も「10日間検出されず、安全に利用できる」
さらに、海外や企業などパビリオンが集結する「パビリオンワールド」の建設現場内のメタンガスの濃度を再検証したところ、4か所で低濃度のメタンガスを検出していたことが分かりました。検出されたガスの濃度は最大7%LELで、労働安全衛生規則で火器の使用禁止や労働者の退避が求められる基準(30%LEL)の4分の1以下のため、工事は継続するとしていました。
万博協会は、「重点的に調査を行ったが10日営業日連続測定したが、更なるメタンガスは検出されなかった。もともと海底だった地層の有機物の分解によってメタンガスが分布・点在すると考えられ、継続的な測定・調査、検知箇所での換気対策などを実施し、測定値が基準値を大きく逸脱していない場合は、安全に会場を利用できる」と結論づけました。
万博協会はガス濃度の測定を継続的に実施し、測定値を毎日ホームページで公表するとしています。
■万博への子ども招待「中止」求める声も…知事「教育的意義が高い」
大阪府は、府内に住む4歳から高校生までを無料で万博に招待することにしていて、5月末の期限までに全体の約7割にあたる約1390校が「希望する」しています。
これに対し、教職員でつくる組合は6月5日、メタンガスの爆発をはじめ、避難計画が定まっていないことや緊急時の医療体制などに不安があることをから、事業の「中止」を求める申し立てを行うなど、教育現場を中心に安全を不安視する声が上がっていました。
万博協会の発表に先立ち、大阪府の吉村知事は24日、「安全面に関しては今日の発表で少し一歩前進したが、安全対策は常に追求していかなければならないことであり、より深く追求する必要がある。最終的には、校外学習というのは学校が決めることだが、(万博への招待事業は)教育的意義が高いと思っているので、参加してもらいたい」と語りました。