茨城県はトウモロコシの生産量が全国第2位の名産地。なかでも、トウモロコシの栽培が
盛んな結城市は、茨城県の西側、関東平野のほぼ中央にあり、昔懐かしい中世城下町の
原形が北端の市街地に残る一方、南部は一大農業地域になっています。この結城市は、
昔から白菜中心の農業地域で、白菜の連作障害を防ぐために、初夏から秋にかけて陸稲
を栽培していました。しかし、陸稲ではなく、収益性に優れるトウモロコシを導入する
事例が増えていき、このことが契機となって栽培面積も増え、今や県を代表するトウモ
ロコシ産地となりました。おすすめの品種は、穂が大きく成長せず、サイズが小ぶりな
スイートコーンの「味来」(みらい)です。実の皮が柔らかくシャキシャキとした食感
と強い甘みが特徴です。これを結城市では「夏祭り」という独自ブランド名で販売して
います。そして、「夏祭り」そのものなのですが、夜明け前に収穫して、その朝に市場
に出す「夏祭り」があり、これを特別に「朝どりトウモロコシ」の名で商品化していま
す。朝どりですから「味来」本来の味を堪能できます。今回は結城市で栽培されている
スイートコーンの「夏祭り」と「朝どりトウモロコシ」そして、味来よりさらに一回り
小さいサイズで、皮がとても柔らかく、非常に甘い、味来の改良品種「ピクニックコー
ン」を紹介します。
<世界のトウモロコシ事情>
世界三大穀物は米、小麦、トウモロコシです。お米は4億t、小麦は6億t、トウモロコ
シは8億t生産されています。トウモロコシが一番多いのです。トウモロコシの内、3億
トンが生食用で、残りの5億tの用途では、65%が飼料用、20%がコンスターチ、残り
の15%は、コーン油、自動車燃料、工業用アルコール、お茶、甘味料、研磨剤、歯磨
き粉、靴墨、化粧品など多岐にわたって利用されています。
1.世界の生産量ランキング:1位アメリカ(30%)、2位中国(22%)、3位ブラジル
(10%)・・・日本は50位以下です。
2.世界の国別消費量:1位アメリカ(26%)、2位中国(22%)、3位EU(6%)
3.世界の国別輸出量:1位アメリカ(33%)、2位ブラジル(25%)、3位アルゼンチ
ン(22%)。・・・日本からの輸出はゼロです。
アメリカは生産量・消費量・輸出量すべてが1位です。中国も生産量が多いですが、
ほとんど国内で消費しており、輸出はゼロです。
4.世界の国別輸入量:1位中国(9%)、2位メキシコ(9%)、3位EU(8%)、4位
日本(8%)。
日本は9割をアメリカに依存しており、輸入されるトウモロコシの大部分は家畜の
飼料、そしてコーンスターチとして利用されています。
尚、対象となっているのは「穀物」のトウモロコシで、トウモロコシは野菜ではな
く穀物に分類されています。しかし、スイートコーンは「野菜類」に分類され
ています。
<国内のトウモロコシ事情>
本格的に栽培・流通するようになったのは、明治時代初期で、北海道開拓に伴い、北海道
農事試験場がスイートコーン(甘味種)である「ゴールデンバンタム」という品種をアメ
リカから導入したことが始まりです。第二次大戦後に「ゴールデンクロスバンタム」が入
り、昭和40年代には「ハニーバンタム」、そして昭和60年代には「ピーターコーン」が登
場したことで、おやつとしての国内需要が急増しました。その頃には、北海道から南下し
て本州に広まり、日本全土でトウモロコシ栽培が始まりました。
1.県別生産量ランキング:1位北海道(4%)、2位茨城県(6.7%)、3位千葉県(6.7%)
・・・2位3位は入れ替わる年度もありますが、上位3県は不動です。
2.トウモロコシの品種・・・国内の生食用だけでも50種類以上あります。
(1)スイートコーン:国内自給率9%で、輸入ものもわずかですがあります。
①「ゴールデンコーン」:一番馴染みのある黄色い粒のコーン。ゴールドラッシュ。
みわくのコーン。味来。おひさまコーン。ピクニックコーン他
②「シルバーコーン」:白い粒のコーンでサラダ向き。ピュアホワイト。バニラッシュ。
ルーシー90.ホワイトレディ他
③「バイカラーコーン」:一代雑種。黄色と白色が3:1のコーン。甘々娘。ハニーバン
タム。カクテル。ピーターコーン。ゆめのコーン他
④「その他」:ちょっと特殊なコーン。色彩豊かなインディアンコーン他
(2)ポップコーン(爆裂種):お菓子のポップコーンを作る際に使用する品種
爆裂種は粒の川が非常に硬いのが特徴。品種:イエローポップコーン
(3)デントコーン(馬歯種):コーンスターチの原料。主に乾燥させて、牛や豚、鳥な
どの家畜の飼料として利用される種類です。
(4)フリントコーン(硬粒種):加工食用・家畜用飼料や工業用に使われる品種。
角状デンプンと呼ばれる硬いデンプンが粒の全体についているのが特徴で、メキ
シコ料理のタコス「トルティーヤ」に使われるのがこの品種です。
(5)ワキシーコーン(もち種):粒の中のデンプンにもち性があり、若いうちに収穫して
蒸すと、もちもちとした食感があるのが特徴。
(6)ソフトコーン(軟粒種):粒の大部分がやわらかいデンプンで形作られていて、実が
くだけやすく断面が粉状になるのが特徴です。
ご存知の名前がでてきましたか?
<トウモロコシの豆知識>
1.トウモロコシは茹でますか?電子レンジですか?
茨城県産とうもろこし 夏祭りは「届いたその日に食べる」のが一番おいしいです。
[レンジで調理]・薄皮を1-2枚残したままラップで包みます。・電子レンジ600W
で5分間加熱します。・軽く塩をふって食してください。
[茹でて調理]・茹でる直前に皮をむき、水洗いします。・水の状態からトウモロコ
シを入れて、沸騰後3分間茹でます。・鍋から取り出した後は、自然
に冷ましてから食してください。
2.トウモロコシの食べ方:「そのままかぶりつく」、「一粒ずつ潰れないように指で
取る」「包丁でそぎ取る」ですかね。栄養を逃がさずに食べる場合は、一粒ずつ
潰れないように指で取るのがおススメです。切ってしまいがちな粒の根元にはビ
タミンE、カリウムなどが豊富で、栄養的にも摂ったほうがよいです。一粒一粒を
取るのは大変ですが、端の部分が台形になっている割りばし(天削箸)やバターナイ
フでトウモロコシを削り取ることができますよ。
3.美味しいトウモロコシの見分け方:・褐色・黒褐色のひげがたくさんある。・皮の緑
色が濃い。・ふっくらつやつやした実が、頭から先端まで隙間なくびっしりつい
ている。・ずっしりと重みがある。
4.トウモロコシを生で食べる:生食に向き不向きの品種があります。ゴールデンラッ
シュ系の中の「ゴールドラッシュ86」「ゴールドラッシュ90」は、粒が大きく甘
い上に、生でも食べられる品種です。生で食べるには、完熟する数日前に収穫し
て食べます。完熟すると粒の皮が堅くなり、口の中に皮が残るからです。ゴール
ドラッシュ系は皮が薄く、水分が多いので実が少し柔らかいと感じ、かじりやす
いかも知れません。ゴールドラッシュ系は家庭菜園でも育てやすいので、チャレ
ンジしてみましょう。
※トウモロコシにはデンプンが含まれているので、お腹を壊す場合もあります。
お腹に自信が無い方は、加熱して食べるのが良いです。もちろん加熱する方が
甘みは感じますよ。
5.粒列の数は必ず偶数になる:トウモロコシは生長過程で細胞が2つに分裂するため、
粒列は必ず偶数になります。
6.粒の数と絹糸の数は同じ:先端から伸びているひげは絹糸(けんし)という。これ
は、トウモロコシの雌花で、雄花から花粉が雌花の絹糸に落ちて受粉する。
粒の一つひとつから出ているため、 粒の数と絹糸の数は同じになる。
7.栄養価・効能:
①栄養:リノール酸、オレイン酸など不飽和脂肪酸が含まれ、これらはコレステロール
を低下させ動脈硬化予防が期待できます。
②お通じ改善:食物繊維が豊富で腸内環境改善に役立ちます。便秘がちの方には向いて
いますが、食べ過ぎはお腹を壊す可能性があり、おすすめしません。
③脳のエネルギー源:甘みは糖質のお陰。脳を働かせるには糖質が欠かせません。とく
に午前中に糖質を摂ると一日に頭や体を働かせるのに良いです。
④体内のアンチエイジング:ビタミンEは抗酸化作用が強いので、アンチエイジング効
果が期待できます。
8.紙おむつの原料は、トウモロコシのデンプン:紙おむつはトウモロコシが原料なの
です。トウモロコシのデンプンから、高分子吸収体(ポリマー)という物質が偶然
発見されました。水を吸収すると網目に広がり、ゼリー状に固まって外に漏れにく
く、吸収後もさらっとした状態を保てるため、紙おむつの原料として使われるよう
になったのです。ちなみに、生理用ナプキンの原料にもなっています。トウモロコ
シは、食べる以外にも「トウモロコシ事情」に記した用途で、身の回りで使われて
いるのです!
<甘味にこだわった品種選定から生まれた「味来」>
「味来」は一般のトウモロコシより小ぶりです。JA北つくば結城園芸部会では、より
美味しいトウモロコシを作るため様々な品種を試験栽培し、その時々で一番おいしい品
種を導入してきましたが、平成9年に、「味来(みらい)」という品種を選びました。
味来はアメリカから導入された品種の品種改良型ですので、茨城県生まれのオリジナル
品種ではありません。味来の収穫時期は、暖かい地域では6月下旬から、北海道のよう
な涼しい地域では8月下旬〜9月中旬までが収穫期間です。
結城市が選定して選んだ味来はそれまでの品種よりも甘みが強く、ジューシーで皮もや
わらかいトウモロコシで、部会ではこれを「夏祭り」という独自ブランドとして生産・
販売することにしました。現在84名の部会員で、約150haの面積で栽培しています。
トウモロコシは、日中高温になると甘さが低下しやすいため、甘さを保ったまま消費者
へお届けできるよう、収穫は朝8時までと決められています。また、収穫されたトウモ
ロコシは、すぐ箱詰めされ、昼の12時までに集荷場に集められます。集荷されたトウ
モロコシは、その鮮度を損なわないように「真空予冷」をかけることで、通常の冷蔵庫
よりも、すばやく冷やして鮮度と味を維持します。そして、その後、次々と大型トラッ
クで出荷され、各地に販売されていきます。真空予冷とは、トウモロコシを真空予冷装
置の中で一定時間真空状態にさらす事で、気化熱で熱を奪い、短時間でトウモロコシを
冷やす鮮度維持システムです。又、輸送時に温度を低く保ち、トウモロコシの鮮度を保
つため、平成23年度から保冷車を導入しました。現在、トレーラー1台、大型トラッ
ク4台、計5台の保冷車が鮮度を維持したままのトウモロコシを首都圏の市場へ運んで
います。
<本来の味が楽しめる「朝どりトウモロコシ」>
「夏祭り」の中でも、夜明けに収穫して朝には出荷するトウモロコシを「朝どりトウモ
ロコシ」という商品名で出荷しています。トウモロコシは、収穫した瞬間から糖度が落
ちていく作物です。朝どりトウモロコシの収穫を始めるのは、なんと深夜2時。早朝
4時半までにJAに出荷し、5時にはお店に向けて配送するシステムになっています。
これらの取り組みにより、朝10時には都内の量販店の店頭に、より新鮮で美味しい
「夏祭り」が並び、トウモロコシ本来の甘さを味わうことができます。朝どりトウモロ
コシは量販店との完全契約販売で、シーズンが始まると約1ヶ月間、農家の方は休み無
しで収穫し続けます。それでも、「最も美味しいものを届けたい!」という一心で、農
家の方は朝どりトウモロコシに取り組んでいます。
<ピクニックコーンの栽培>
名前の由来は「ピクニックに持っていくのに丁度良いサイズ」だからだそうです。トウ
モロコシとしては小さく12~15cmで、一般的なトウモロコシの7割程度の大きさです。
冷やして食べるのにはちょうど良いと人気の品種です。
ピクニックコーンは「味来」の品種改良型です。ですから、これも県のオルジナル品種
ではありません。ピクニックコーンは全国で作付けされているので、旬の時期は長く、
暖かい地域では5月下旬から、涼しい地域では11月下旬に収穫するところもあります。
関東圏では一般的にスーパーに出回るのは6月〜9月メインなので長い期間楽しめます。
大きさは手の平サイズの小ぶりですが、平均糖度が18度というイチゴと並ぶフルーツの
ような甘味と皮が柔らかくジューシーなので生食も可能なのが特徴です。更に、冷やす
ともっと甘さを強く感じること、茹でて時間が経っても美味しく食べられる日持ちの良
さが人気です。現在、結城市の作付け面積は、「味来」の150haに対して、わずか
1haです。というのも、店頭で他の品種と並んだ場合、その小ささゆえに、お客様の手
になかなか取ってもらえない品種だからです。「冷たくされると甘いのです。」がキャ
ッチコピーですが、そのとおりで、冷蔵庫で冷やして食べると、より一層甘さが引き立
ちます。直売所などでも稀にしか並ぶことがありませんが、見つけた時はぜひ手に取っ
てみてください。
美味しい食べ方はラップにくるんで、レンジで温めた後に氷水にさらして冷やし、冷蔵
庫に入れておくと、また違った甘味をいつでも楽しむことができます。ぷりぷりの甘い
コーンを一度お試しあれ。
<おいしいトウモロコシができるのには理由がある>
それは輪作だからです。白菜とトウモロコシの相性は抜群。たくさん肥料を入れた白菜
のあとに育てるトウモロコシは、白菜が吸いきれなかった栄養素やミネラルをぐんぐん
吸収して、特別に甘いしっかりとした実をつけてくれるのです。
是非、結城市の「味来」「朝どりトウモロコシ」そして「ピクニックコーン」をご賞味あれ!
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